2025/10/24
【インフラエンジニアへの道 キャリア相談Q&A】#6 |クラウド時代の柔軟な働き方
未経験からITインフラ業界への就職・転職を考えているものの、キャリアアップや年収、働き方など、多くの疑問や不安を抱えているのではないでしょうか?
【インフラエンジニアへの道 キャリア相談Q&A】では、ITインフラ業界のリアルな情報をお届けします。アドバイスするのは、エンジニア歴23年の副社長・永江と、IT業界で10年以上の採用経験を持つ人事責任者・小山です。
今回のテーマは「クラウド時代の柔軟な働き方」です。
永江 耕治(ナガエ コウジ)
取締役副社長
Webエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、2002年にエーピーコミュニケーションズに入社。SIベンダーでプリセールスから設計・構築までを行うプロジェクトにエンジニアとして参画しながらマネジメントも兼務。その後、人事部門に異動。業務と並行して、MBA(2012年。中央大学大学院/人的資源管理専攻)を取得。2016年にITインフラ部門へ戻り、部下250名を抱える事業部責任者を務める。2018年に取締役副社長に就任。
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小山 清和 (コヤマ キヨカズ)
コーポレート部門 戦略人事本部 Talent Acquisition部 部長
飲食業界からキャリアをスタートさせ、その後、人材ビジネスに携わり、採用業務経験を積む。2016年10月にグッドパッチに転職し、キャリア採用をメインに、現場と連携した強固な採用体制の構築、採用数の確保、離職率の改善、認知度向上などに向けた施策などを推進。2023年11月にエーピーコミュニケーションズに入社し、2024年1月からTalent Acquisition部の部長として全社の採用戦略を担う。趣味は週6日のランニング。副業ではプロコーチとしても活動中。
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<目次>
⬛️ IT業界の残業は今でも多い?
⬛️ 面接で「ワークライフバランス重視」と伝えたら不利になる?
⬛️ インフラエンジニアもリモートワークはできる?
⬛️ リモートワークを叶えるために、準備すべきことは?
⬛️ インフラエンジニアは子育てとの両立が難しい?
⬛️ 子育てとの両立が叶う会社を見極めるポイントは?
⬛️ IT業界の残業は今でも多い?
永江: かつてのIT業界には、長時間労働が当たり前というイメージがありました。特に2000年頃は、現在で言う「ブラック」な労働環境が業界全体に蔓延しており、平均残業時間も現在より格段に長かったのは事実です。
しかし、現在は状況が大きく変化しています。その背景には、主に3つの要因があります。第一に、仮想化技術やクラウドの普及といった技術革新による生産性の向上。第二に、2019年施行の「働き方改革関連法」を契機に、大手IT企業や顧客企業が労働環境の改善に本格的に乗り出したこと。そして第三に、新型コロナウイルスの流行に伴うテレワークの急速な普及です。
ちなみに、エーピーコミュニケーションズの事例で言うと、2011年~2013年頃までは平均残業時間は月に約30時間でしたが、段階的な改善を経て、2023年には月平均約19時間まで減少しました。これは月20日勤務と仮定すると1日1時間未満に相当します。
IT業界全体を見ても、労働環境は格段に改善されているというのが私の感想です。
小山: かつては「時間があるだけ働く」といった風潮も確かにありました。IT業界の労働環境が過酷だというイメージは、当時の名残を引きずっている部分があるのだと、個人的には思います。
採用活動をする中で、世間では「ブラック」といった言葉が独り歩きしていることもありますが、それはあくまで業界の一つの側面に過ぎません。労働時間に対する価値観は人それぞれですし、企業の働き方の方針も多様化していますから、表面的な情報だけでなく、その実態をしっかり見極めることが重要ではないでしょうか。
⬛️ 面接で「ワークライフバランス重視」と伝えたら不利になる?
小山: 採用市場において「ワークライフバランス」への意識は非常に高まっていますので、不利になるということはありません。
これは、転職が一般的になった時代背景も関係しています。企業が従業員に対し、適切な待遇や良い環境を提供しなければ、優秀な人材は辞めてしまうからです。人を資本と捉えて投資をする「人的資本経営」という考え方が強まっていることも、この変化を後押ししています。
ただし、注意すべき点もあります。「ワークライフバランス」の実現は、まず組織や市場で一定の評価と信頼を勝ち取ることが前提になる、ということです。周囲から「この人になら任せられる」という信頼があって初めて、個人のライフステージに合わせた要望が受け入れられるのです。自身の希望を実現するためには、まず組織や事業の成長に貢献することが不可欠である、と認識することが重要です。
永江:経営者の視点からお伝えすると、時間や場所に縛られない柔軟な働き方は、社員一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出す上で極めて重要です。
人生の長いキャリアの中で、子育て、介護、自身の体調など、様々なライフステージの変化に対応できる環境が必要です。IT業界は他の業界よりも柔軟な働き方がしやすいはずだと考えており、エーピーコミュニケーションズではそのような環境づくりを追求しています。
ただし、私たちが目指すのは、あくまで「成果」にコミットし、学び成長し続ける意欲のある人材に、多くの機会を提供できる環境です。「楽そうだから」という動機とは一線を画します。経営方針としても「ぬるま湯のような職場を作るつもりはない」と明言しているんです。
小山さんが言っていた通り、自律的に仕事を進め、組織に貢献する意欲と実行力があることが大前提になることを忘れてはいけないですね。
⬛️ インフラエンジニアもリモートワークはできる?
永江: はい、インフラエンジニアもリモートワークが可能な時代になっています。
かつてのITインフラは、ネットワーク機器やサーバーといった物理的な機器を扱うため、現場常駐が基本でリモートワークは困難だと考えられていました。しかし、その状況は大きく変化しています。
最大の要因は「クラウド技術の浸透」です。物理的なサーバーを触る、オンプレ環境の仕事もゼロではありませんが、クラウド案件が増えたことで、遠隔での作業が可能になり、効率が格段に上がりました。
エーピーコミュニケーションズの場合、社員の約8割がほとんどリモートワークという働き方を実現しています。残りのうち1割が半分程度の出社、もう1割がほぼ毎日出社という割合です。また、当社のオフィスは東京ですが、北海道や沖縄など地方に在住し、フルリモートに近い形で働いている社員も80名ほどいます。
⬛️ リモートワークを叶えるために、準備すべきことは?
小山:リモートワークを実現するためには、そもそもその働き方ができる会社を選択しなければなりません。求人票に「リモートOK」と書かれていても、実態が伴わないケースや、入社後に方針が変わってしまうリスクがあるため、会社選びの見極めが必要です。
その上で採用候補者に求められるのは、まず「自身がその企業にどう貢献できるか」という視点を明確に伝える姿勢です。貢献の意思を示した上で、自身の希望する働き方を、家庭の事情なども含めて具体的に伝えるのが理想的な流れと言えるでしょう。具体的な事情を率直に共有することで、企業側も配慮しやすくなり、結果として相互理解が深まります。
永江: リモートワークを叶える上で、重要となるのが「セルフコントロール」ができる人になることです。リモートワークでは周囲の目がないため、自律的に仕事を完結させ、課題があれば自分から解決していく能力が必須です。「成果を出すことができる人」であれば、働く場所はそれほど問われなくなります。
⬛️ インフラエンジニアは子育てとの両立が難しい?
永江: かつては「夜間対応」や「突発的な障害対応」が、子育てとの両立を阻む大きな要因となっていました。
エーピーコミュニケーションズの事例を挙げると、以前は24時間365日対応の案件も複数ありましたが、事業戦略上、そうした案件は減らしています。現在、夜間対応を担当している社員は全体の1%程度であり、突発的な障害対応も昔に比べると大幅に少なくなりました。現在では、子育て中の女性エンジニアも数多く活躍しており、男性社員の育休取得も進むなど、性別を問わず両立しやすい環境が整いつつあります。
ただし、全ての企業がこの変化を遂げているわけではありません。オンプレミスの物理機器を扱う業務の比率が高い企業では、依然として現場対応や緊急の呼び出しが発生する可能性があります。子育てとの両立を重視する場合、応募先や所属企業が主にどのような事業領域の案件を扱っているのか、深く理解しておくことが重要です。
⬛️ 子育てとの両立が叶う会社を見極めるポイントは?
永江: 子育てと両立しやすいキャリアを築くためには、「リモートワークが可能か」がポイントになります。その上で、自身の市場価値をさらに高めるのが「クラウドスキル」です。クラウド案件はリモートワークとの親和性が高く、より柔軟な働き方を実現しやすいからです。
小山:子育て支援制度を設けている企業は数多くありますが、制度が「存在すること」と、それが「気兼ねなく利用できること」は全くの別問題です。
制度が使える会社かどうかを判断するポイントの一つとして、経営者や直属の上司になる人が子育てや育休を経験しているかどうかが挙げられます。やはり、人は自身が経験して初めて、当事者の状況を深く理解できるものです。制度を運用する側にその経験がないと、なぜ休むのかが理解されず、制度が使いづらい状況が生まれがちです。
例えば、面接の場で、上司となる方の価値観や、部署内での実際の制度利用率などを具体的に質問してみるのも有効な手段だと思います。参考にしてみてください。
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今回の【インフラエンジニアへの道 キャリア相談Q&A】では、「クラウド時代の柔軟な働き方」に関する疑問に、お答えしてきました。本記事が、自分自身に合ったキャリアパスを見つけるヒントになれば嬉しいです。
また、皆さんからの質問も随時受け付けています。悩みや疑問、気になることがあれば、ぜひお気軽にお寄せください。引き続き、現役のプロがアドバイスしていきます!
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※この記事は、Podcast『インフラエンジニアのホントのところ』の内容をもとに再構成しています。
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