2025/12/04
インフラエンジニアのホントのところ #30|キャリアアップしたいならこれを読め!おすすめのキャリア本3選
ITインフラって、「なんだか難しそう」「地味で大変そう」と思われがち。
でも実は、社会を支える根幹にある、とてもやりがいのある仕事なんです。
そんなリアルをお届けするPodcast 「インフラエンジニアのホントのところ」。
MCにはベンチャー女優の寺田有希さんを迎え、当社の副社長 永江耕治と採用責任者 小山清和が、現場・経営・採用の視点から語ります。
今回のテーマは「キャリアアップしたいならこれを読め!おすすめのキャリア本3選」。
「市場価値を上げたい」「評価されたい」「でも、何を選べばいいかわからない」ー
そんなエンジニアの背中を押す、現場でも使えてキャリアにも効く!
「今読むべき技術書」を、元エンジニアの現役経営者が3冊厳選してご紹介します!
<目次>
1.オープニング
2.おすすめ本①『7つの習慣』
3.おすすめ本②『伝え方が9割』
4.おすすめ本③『項羽と劉邦』
5.クロージング
1.オープニング
寺田:インフラエンジニアのホントのところ。言葉は有名でも、何かと知らないことが多いインフラエンジニアの世界。この番組は、キャリアや将来性、魅力など、ついつい隠れがちな「ホントのところ」、インフラエンジニアキャリアの真実を、業界のプロであるエーピーコミュニケーションズの永江さん、小山さんと共に徹底解剖していくポッドキャストです。
永江:エーピーコミュニケーションズの永江です。インフラエンジニア業界歴は23年以上で、現在はエーピーコミュニケーションズの取締役 副社長をしています。よろしくお願いします。
小山:エーピーコミュニケーションズの小山です。私は10年以上のIT業界での採用経験と、7回にわたる転職でキャリアを形成してきた人事です。エーピーコミュニケーションズでは採用責任者をしています。よろしくお願いします。
寺田:そしてMCを務めます、ベンチャー女優の寺田有希です。
さて、2回にわたっておすすめの本を紹介していただいております。前回は元エンジニアの永江さんがメインで「技術書3選」をご紹介しましたが、本日は小山さんメインで「おすすめのキャリアアップ本3選」をお届けします。
世の中には本がたくさんありますが、その中で読むべき本とどう巡り合っているのか、選び方が気になります。まず永江さん、いかがでしょう?
永江:私はSNSで繋がっている知人や友人が「この本を読んでよかった」という感想を共有しているのをよく見かけます。それを見て、「あ、この人がこう思うなら良い本なのかな」と感じて、とりあえず注文しておく、というパターンが多いですね。
寺田:身近な人の口コミを参考にされているんですね。小山さんはいかがですか?
小山:私の場合は、実はあまり書籍を読まないタイプで、もっぱら漫画派なんです。ただ、人生で壁にぶつかることってありますよね。その時の自分の知識だけでは乗り越えられないようなことが起きた時に、関連する本を急に3、4冊まとめて買って読むんです。
ですから、急に目の前に現れた壁を乗り越えるために本を読むことが多く、人から勧められて読むことはあまりないですね。
寺田:壁に当たった時といっても、例えばコミュニケーションの壁だとしたら、コミュニケーションに関する本は山のようにあるじゃないですか?
小山:そこは壁にぶつかっても、そのコミュニケーションの「どこ」に問題があるのかという点がポイントだと思っています。今回紹介させていただく本の中にも、実際に私がぶつかった壁を乗り越えるために読み、視界が開けた1冊が含まれています。
寺田:なるほど。悩みを細分化し、出会うべくして出会った3選を今日はご紹介していただけるということですね。
小山:はい。かなりハードルが上がりました(笑)
寺田:失礼しました(笑)。ということで本日のテーマは「キャリアアップをしたいならこれを読め!おすすめのキャリア本3選」です。
2.おすすめ本①『7つの習慣』
寺田:年齢や人生のステージによって、どこまで行ってもキャリアの悩みは尽きません。「今のままでいいのか」「これからどうしていけばいいのか」。そう悩んだ時に、そっと背中を押してくれるようなキャリア本を厳選して3冊、ご紹介していただきます。それでは採用責任者もされている小山さん、まず1冊目は何でしょうか?
小山:1冊目は、スティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』です。私自身、研修を受けたことがあり、非常に印象に残っている本の1つです。
寺田:これはどういった本ですか?
小山:簡単に言うと「習慣を変えていく」ための本です。人には行動する時やタスクの優先順位を決める時に、無意識の習慣やルーティンがあります。この本では、第1から第7までの習慣が紹介されており、順番に取り組んでいく必要があります。
これを実行することで、まずは自分が成功する「私的成功」を目指します。最初は「依存」している状態から始まります。
そこから「自立」していくのが、第1から第3の習慣の話です。自立して自分が大丈夫な状態になったら、次は「他者」との関係性です。人は1人では生きていけませんから、他者と協力する「相互依存」やチームワークの話になります。
多くの人は最初、自分のことばかり考えてしまいがちです。そこから変化し、相手のことも考えられるようになり、理解を示し、傾聴する。「相手のためを思って聞く」ことを意識するなどして、一緒にやることでシナジーを出していく。「1 + 1」が2ではなく、3にも4にも広がっていくという考え方です。
そして、最後の第7の習慣が実は一番大事なのですが、「刃を研ぐ」というものです。つまり、自分を磨き続けなければならないということです。第6の習慣まで到達したから終わりではなく、常に肉体、精神、知性、社会・情緒をバランスよく磨き続ける。人はずっと学び続け、変わり続けなければいけないということなんです。
私自身のキャリアがうまくいかなかった時は、ベクトルが自分ばかりに向いていて、相手視点がありませんでした。相手の視点に立って聞くことができず、自分が伝えたいことばかり伝えてしまっていた時期があったんです。
その時にこの研修を受け、「相手が変わる前に自分が変わらないとダメだ」という信念ができ始めた頃にこの内容を聞いて、「やっぱりそうだよね」と腹落ちしました。関わり方も含めて自分が変わる必要があると再確認でき、ある意味「今やっていることは無駄ではなかった」と思わせてくれた本でもあります。
本の内容自体は、実はそれほど難しいことは書いていないんです。ただ、実行するのは本当に難しい。自分の価値観を変えるということですから。
寺田:そうですよね。
小山:そうなんです。それを習慣化していかなければなりません。1つの習慣が定着するまでに、どんなに頑張っても3ヶ月はかかります。ですから、第1の段階から始めていくのには非常に時間がかかります。
また、年齢が上だからといって、上のレベルの習慣ができているとは限りません。40代、50代でも第1や第2の段階の人もいます。「年齢が上だから」「若いから」というのは関係がない、というのが怖いところでもあります。
寺田:読むのが少し怖くなりそうですね。自分がどの段階にいるのか突きつけられるようで。でも、そこに向き合わないと行動も未来も変わっていかないということですよね。
小山:まずは「自分」のところでぶつかる人が圧倒的に多いと思います。「緊急ではないけれど重要なこと」が実は大事なんですが、大体の人は「緊急で重要なこと」や、重要でも緊急でもないことに追われてしまいがちです。中長期的に考えると自己投資や人間関係の構築など、「緊急ではないけれど重要なこと」が本来は大切なんです。
タスク管理をして「やる」「やらない」を決めるなどが必要になってきます。
実はこの本、活字版だけでなく漫画版も持っているのですが、非常に読みやすいんです。「活字はちょっと無理」という方は、ぜひ『7つの習慣』の漫画版から入ることをお勧めします。
寺田:読みやすそうですね。
小山:160ページぐらいで、とても読みやすいです。漫画版でも要点がしっかり押さえられているので、十分だと思いますよ。
寺田:永江さんは『7つの習慣』を読まれたことはありますか?
永江:はい、読んだこともありますし、当社の中で研修を行ったこともあります。私も参加したことがあるのですが、半年ぐらいかけて、各テーマで動画を見て、グループでワークをして、議論をして、振り返りをする、というかなり細かい内容の研修でした。
寺田:永江さんがおっしゃっている研修に、小山さんも参加されていたのですか?
小山:APCでの研修は受けていませんが、運営会社は恐らく一緒だと思います。実施している会社が日本ではほとんどないので。
永江:それぐらい、簡単に変わるものではない基本的なことなんです。行動変容するには時間がかかりますが、基本行動を変えられると、それだけインパクトも大きいということだと思います。
寺田:小山さんが研修の冊子も見せてくださいましたけど、ワークもたくさんあって研修も大変そうですね。
小山:そうですね。結局、研修もインプットの一つなので、それを行動に移さなければ意味がありません。研修を受けたからといって全員が変わるわけではないので、自分を磨き続け、変えていくことが大切です。
研修して終わりではなく、学んだことを実践し、現状をしっかり受け止めることが重要ではないでしょうか。
寺田:読んだから変わるというわけではなく、行動に移すために未来とも自分とも向き合っていくための1冊という感じがしますね。
小山:はい。キャリアに悩んでいる方やモヤモヤしている方には、一番最初に読んでいただくと良いと思います。
3.おすすめ本②『伝え方が9割』
寺田:続いて2冊目は何でしょうか?
小山:2冊目は、コピーライターの佐々木圭一さんが書かれた『伝え方が9割』です。
寺田:これは私も読んだことがあります。
小山:あえて2番目にしたのには理由があります。『7つの習慣』で自分の習慣を変えても、やはり壁にぶつかることはあるんです。行動を変えるだけではうまくいかない場面が出てきます。
何かを進める時には、誰かに頼らなければなりません。『7つの習慣』も後半は他者との関わりが出てきますが、単に自分の伝えたいことを伝えているだけでは、うまくいかないんです。
相手にちゃんと伝わっているかどうかが重要です。自分のメリットばかり考えて相手に伝えても、うまくいきません。例えば「仕事を一緒にやろう」という時に、「これをやったら私の手柄になるから」という理由で、相手に何のメリットもないのにお願いしても、絶対にやってくれませんよね。
相手の視点に立ち、相手はどういうメリットを感じてくれるか、どんなデメリットがあるか、そして好き・嫌いなど思考の癖を理解した上で伝えていくことが大切です。
よく「自分はちゃんと言ったのに、やってくれない」と言う人がいますが、そもそも伝え方が相手の視点に立っておらず、間違っている可能性があります。「伝えたつもりになっている」だけかもしれません。
私は今、「どう伝えたか」よりも「どう伝わったか」を非常に意識しています。もちろん、意図しない伝わり方をして反省することもありますが、伝え方を変えるだけで「NO」が「YES」になることもあるんです。
事実を淡々と伝えるだけでは伝わらないので、少し大げさに表現してみたり、演出を加えたり、違うことに例えてみたりします。例えば、業界が違う人には、自分たちの業界の例えではわからないので、あえてその業界の人にも分かるような例え話にするなど、これも一つの技術です。
また、私は割と自分の失敗談やダメだった時の話をよくします。ポジティブな話よりも、「この人も昔はこんな感じで大変だったんだな」というほうが共感してもらえたりします。感情面で相手の立場を考えて伝えることがすごく大事です。
実は私も過去にたくさん失敗がありました。そんな風に言っていないのに、「小山さんがこんなことを言っている」と誤解されたり、相手を怒らせてしまったり。「なぜなのかな」と思っていた時にこの本に出会い、分かりました。「ただ自分の伝えたいように伝えていただけなんだ」と。相手の視点や背景を考えずに発言していたことに気づかされました。
そこから伝え方はかなり変わったと思います。昔から私を知っている人からは「直接的な物言いが減りましたね」と言われますし、感覚的ではなく事実ベースや本人の発言ベースで話すようになりました。
また、相手によって伝え方を変えられるようにもなりました。ロジカルな話が好きな人にはロジカルに、背景を知りたい人には背景から伝えるなど、手を変え品を変え対応できるようになりました。
この本も漫画版がありますので、そちらの方が分かりやすいかもしれません。
寺田:漫画版があるのは知りませんでした。
小山:私も書籍の方から読みましたが、漫画の方がケーススタディとして場面がイメージしやすく、分かりやすいのでお勧めです。
寺田:永江さんは経営者として、やはり「伝え方」は気にされていますか?
永江:かなり気にしていますね。相手によって変えなければいけませんし、同じ言葉でも受け取り手によって解釈が変わってしまいます。どう伝えるかは常に考えながら話をしています。
寺田:大事ですね。1冊目で行動と意識を変えてから、人と関わっていく上での伝え方を学ぶ。ここをないがしろにしては次のステップに行けない気がします。
4.おすすめ本③『項羽と劉邦』
寺田:ではラスト3冊目、小山さんいかがでしょう?
小山:いきなりここで「え、それ?」と思われるかもしれませんが、横山光輝先生の『項羽と劉邦』です。漫画作品ですね。
時代背景としては、今流行っている漫画『キングダム』の少し後の時代です。『キングダム』の主人公たちが活躍して秦という国が興りましたが、全国各地で反乱が起こり、秦はあっという間に滅んでしまいます。
その後に覇権を握るのが「漢(前漢)」です。その漢の皇帝になったのが劉邦です。そして、その劉邦と覇権を争ったのが楚の項羽という人物です。この2人の戦いを描いた作品で、司馬遷の『史記』に基づいています。
これを選んだのにはちゃんとした理由があります。
寺田:気になります。「いきなり感」がまだ残っていますので(笑)。
小山:項羽と劉邦、どちらも人気がありますが、項羽の方が人気があるかもしれません。非常に武勇に優れ、カリスマ性があり、とにかく強い。「一騎当千」で、大将として先頭を引っ張っていくタイプです。しかも貴族出身です。
しかし、最後は悲劇的な死に方をします。「四面楚歌」という言葉の語源になったエピソードがありますが、敵に囲まれた夜、四方から故郷である楚の歌が聞こえてきて、「周りは皆敵になってしまったのか」「味方の楚兵も降伏してしまったのか」と絶望する場面です。
一方の劉邦は農民出身で、ぶっちゃけ結構だらしない、不真面目な人でした。役人をしていた頃、任務に遅れそうになり、当時は遅れると斬首刑だったので「間に合わないからみんなで逃げようぜ」と逃亡してしまうような人物です。
しかし、彼は人に恵まれていました。「人たらし」な部分があったのでしょう、次第に登り詰め、項羽のライバルとなります。
項羽には范増(はんぞう)という軍師がいて、「劉邦は今のうちになんとかした方がいい」と進言していたのですが、項羽はことごとく無視しました。「あいつなんか大したことないから大丈夫だ」と、フィードバックに耳を貸さなかったのです。
劉邦は何度も命の危機に遭いますが、それを乗り越えます。彼の良いところは、能力が際立って高かったというより、度量が広かった点です。そしてすごく素直で、人の話をちゃんと聞く人でした。
そのおかげで優秀な人たちが集まり、適材適所で活躍し、結果的に項羽に勝利します。劉邦自身の能力というより、周りの人を信頼し活用した結果です。
対照的に項羽は自分中心で、フィードバックを受け入れず、行動を変えなかった。その結果、仲間や軍師が離れていき、身を滅ぼすことになりました。
歴史を紐解いても、どんな立場であれ、しっかりフィードバックを受け止めること、自分の得意ではないところは誰かに任せることが組織として勝つ要因になります。逆に、いくら優秀でも一人では限界があり、身を滅ぼすこともある。
非常に対照的なリーダー論として面白い話なんです。
ただ、オチというわけではありませんが、劉邦は漢を建国した後、猜疑心が強くなり、功臣である部下たちを粛清し始めます。優秀な部下が愚か者のふりをして難を逃れたり、実際に粛清されたりと、劉邦自身もトップに立った後の苦しみを味わいます。そこから中国の歴史が続き、やがて三国志の時代へと繋がっていくわけです。
寺田:聞いているだけでも、永江さん、経営論などにかなり関わってきそうなお話ですね。
永江:歴史の本から学べることもありますし、純粋に面白いですよね。
寺田:小山さんは、ここから組織論やリーダー論を学ばれたからこそ、この3冊に入れられたのでしょうか?
小山:人間の習慣や本質は、時代を経てもそう簡単には変わりません。便利になり高度化しましたが、歴史を紐解くと似たようなことがたくさん起きています。王朝の滅亡や政策の失敗など、現代と共通する点は多いんです。「歴史は繰り返す」と言われますから。
『失敗の本質』という有名な本もありますが、過去の失敗から学べることは多いです。「昔のことだから」と切り捨てるのではなく、過去に起きたことの延長線上に私たちが生きていると考え、過去の失敗を踏まえて現代に置き換えて考える必要があります。そういった意味で、歴史から学ぶのは非常に面白いですね。
5.クロージング
寺田:ということで3冊ご紹介いただきました。現代のこと、歴史のこと、バランスよくご紹介いただきました。永江さん、いかがでしたか?
永江:『項羽と劉邦』は少し意外でしたが、司馬遼太郎さんも書かれている題材なので、興味はありました。まだ読んでいなかったので、読んでみたいと思いました。
小山:『キングダム』と『三国志』の間の時代なので、少し人気が薄いところなんですよね。
寺田:前後があまりに有名になりすぎてしまって。
小山:そうなんです。
寺田:でも、歴史から学ぶ姿勢や、結局人間は同じ行動をしてしまうという点は、「本当にそうだな」と思いました。現代の本だけでなく、歴史もバランスよく読むのが良いですね。
小山:圧倒的に活字ではなく漫画ですけどね(笑)。一度ハマると本を買って徹底的に読んだり、映像作品を見たりもします。
寺田:ぜひ皆さんも、出会うタイミングが今だったと思って、悩んでいる方は参考にしてみてください。
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