2025/12/10
インフラエンジニアのホントのところ #31|現場のインフラエンジニアからプリセールスエンジニアへ。新しいキャリアの形を徹底解剖
ITインフラって、「なんだか難しそう」「地味で大変そう」と思われがち。
でも実は、社会を支える根幹にある、とてもやりがいのある仕事なんです。
そんなリアルをお届けするPodcast 「インフラエンジニアのホントのところ」。
MCにはベンチャー女優の寺田有希さんを迎え、当社の副社長 永江耕治と採用責任者 小山清和が、現場・経営・採用の視点から語ります。
今回のテーマは「現場のインフラエンジニアからプリセールスエンジニアへ。新しいキャリアの形を徹底解剖」。
今回はゲストをお迎えし、今注目されているプリセールスエンジニアという働き方の魅力と、その実態について深掘りしていきます。
<ゲスト>
市川 豊(いちかわゆたか)
これまで、インフラエンジニア、フロントエンドエンジニアとして官公庁のシステム基盤を中心としたサーバの設計構築、運用保守、Web システム開発を担当。技術教育者として専門学校でクラウドやOSS技術の授業や企業様向けプライベートトレーニング講師も担当。アドボケート/エバンジェリストとしてミートアップ、カンファレンスで登壇。現在は、クラウドネイティブ技術を中心とするプリセールスエンジニアとして活動。
<目次>
1.オープニング
2. 元・現場エンジニアが語る「プリセールス」への転身
3. プリセールスエンジニアの仕事とは?提案からエバンジェリスト活動まで
4. 現場エンジニアとの決定的な違いとは?
5. 「分からない」が「分かる」に変わる瞬間。プリセールスエンジニアのやりがい
6. 技術を極め、伝える。エンジニア・エバンジェリスト・教育者の3つの顔
7. 技術が好きで、失敗経験がある人こそ向いている?プリセールスの適性
8. クロージング
1.オープニング
寺田:インフラエンジニアのホントのところ。言葉は有名でも、何かと知らないことが多いインフラエンジニアの世界。この番組は、キャリアや将来性、魅力など、ついつい隠れがちな「ホントのところ」、インフラエンジニアキャリアの真実を、業界のプロであるエーピーコミュニケーションズの永江さん、小山さんと共に徹底解剖していくポッドキャストです。
永江:エーピーコミュニケーションズの永江です。インフラエンジニア業界歴は23年以上で、現在はエーピーコミュニケーションズの取締役 副社長をしています。よろしくお願いします。
寺田:そしてMCを務めます、ベンチャー女優の寺田有希です。さてさて永江さん、またゲストが来てくださっております。
永江:そうですね、楽しみですね。
寺田:この方と永江さんのつながりは?
永江:実は、前職で私たちエーピーコミュニケーションズに所属してくれていた方なんです。
寺田:そうなんですね。
永江:退職されてから何年か経ちますが、今でもいろんなところでお付き合いさせていただいて、仕事でもつながりがあります。
寺田:ということは、インフラエンジニアをされていたんですかね。
永江:そうですね。
寺田:今は魅力的なお仕事をされているということで、その辺も今日は詳しく聞いていきたいと思います。
2. 元・現場エンジニアが語る「プリセールス」への転身
寺田:本日のテーマは、「現場のインフラエンジニアからプリセールスエンジニアへ。新しいキャリアの形を徹底解剖」です。
インフラエンジニアとして現場で培った経験を活かし、技術の伝道師として活躍するキャリアがあります。本日はゲストをお迎えし、今注目されているプリセールスエンジニアという働き方の魅力と、その実態について深掘りしてまいります。
それではゲストをご紹介したいと思います。プリセールスエンジニアの市川豊さんです。どうぞよろしくお願いします。
市川:よろしくお願いします。市川豊と申します。
寺田:では、まず現在どんなことをされているか、そしてこれまでの簡単な経歴を教えていただいてもいいですか?
市川:現在は、セールスエンジニアというカテゴリーの中で、ソリューションアーキテクトとアドボケイト、エバンジェリスト的な形で仕事をしております。
主にお客様のシステムの課題などを、自社の製品でどう改善できるか、アーキテクチャーやQAなどを担当しつつ、自社の製品を広く知ってもらうために、アドボケイト、エバンジェリスト活動として様々なカンファレンスやイベント、コミュニティ活動での登壇などをしています。
私はプレゼンが得意ということもあるので、ここ最近は特にアドボケイト、エバンジェリスト的な活動の比重が少し強いかな、というところはありますが、基本的にプリセールスエンジニアとして多岐にわたって色々やっております。特に業務のカテゴリーとしては、「クラウドネイティブ」という領域の製品を扱っております。
経歴はこのIT業界でもだいぶ長いんですが、元々はWebの、今でいうホームページを作るような仕事をしていたんですけれども、その中でLinuxなどのサーバーに興味を持ち、そこからインフラエンジニアのキャリアが始まりました。
転職をして、長いこと官公庁系のシステム、特にLinuxサーバーを作る業務に携わっていました。そこからコミュニティ活動をしたり、専門学校で教えたりといった、アドボケイト・エバンジェリストや技術教育者という仕事にも携わり、今のプリセールスエンジニアに、というような大きな流れがあります。
寺田:結構、職種というか関わるお仕事も変えてこられたんですね。
市川:そうですね。基本はインフラエンジニアをメインにしつつ、専門学校で教えたりコミュニティ活動をしたりと、多岐にわたってやってきました。
寺田:まさにインフラエンジニアに関わる様々なお仕事、という感じですね。そして先ほど冒頭でもお話いただきましたが、永江さんとの関係としては、以前エーピーコミュニケーションズにいらっしゃったと。
市川:そうですね。前職で2年半くらい勤めていましたので、永江さんは元上司ですね。
今も、エーピーコミュニケーションズ主催の、技術書を100倍楽しむ!『エンジニアBooks』などのイベントで登壇したり、定期的にイベントで一緒になるとお会いしたりとか、そういったことがあります。
▲市川さん登壇回:データ・AIエンジニアBooks#54 – 30分でわかる「OCIで学ぶクラウドネイティブ 実践×理論ガイド」
永江:今でも色々相談することもありますね。
寺田:そして先ほどおっしゃっていた、永江さんが主催されてるYouTubeチャンネルにも出てらっしゃるんですね。
永江:最近も出ていただきました。
市川:そうですね、3回ぐらいですかね。
永江:それだけ本を書かれているってことなんですけどね。
寺田:ちなみに、何冊ぐらい書かれているんですか?
市川:1人で書いたのが1冊なんですけど、共著が3冊なので、計4冊です。
寺田:4冊はなかなか出せないですよ。
3. プリセールスエンジニアの仕事とは?提案からエバンジェリスト活動まで
寺田:今回のテーマともなっているプリセールスエンジニア、その魅力とどういうお仕事なのかというところを深掘りしていけたらなと思ってます。市川さん、そもそもプリセールスエンジニアとは何でしょうか?
市川:これは色々な会社によって違ったりもするんですが、私がいるところでは、まず、お客様からの「御社の製品を使いたい」「今こういう状況だ」というところから始まります。
クラウドをベースにしているので、今までハードウェア(オンプレミス)でやっていたものをクラウドに変えたい、移行したいというような時に、「どう移行するか」「どういう製品・サービスでアプローチして改善できるか」というお話をしながら進めていきます。
まずは「こういう風にやってみるのはどうでしょう」という提案をして、そこからPoC(概念実証)と言われる簡単なベースを作ってみたり、技術支援をしたり。そして「じゃあ実際に本当に使ってみよう」ということになれば、今度はポストセールスエンジニアやパートナーの方々に引き継ぎます。
その最初の段階ですね。「これから、こういうことしたいんだけど」という要望に対して、「うちの製品だとこういうことができますよ」というところから、一緒にお客様と考えていくような形です。それがまずは大抵のプリセールスの共通点です。
あとは、もともとお客さま先に常駐しているエンジニアがいる場合、そこから「今お客様からこういう提案が来てるんだけど、ちょっと相談に乗ってくれない?」みたいな形で相談が来て、一緒にお客様と弊社のエンジニアと私が入って、「こういう風な形でできますよ」と提案を詰めていくこともあります。
コストの面であれば、「ここが安くなります」とか、「ここは高くなるんですけど、妥協せずに行くとトータルで考えてみるとやってよかったという形になりますよね」とか。
システムの課題であれば、例えば「運用で人的コストがかかっていたけど、このサービスとこのサービスを組み合わせることで少し抑えられますよね」といった話をして、いかにお客様にとって良いシステムとなっていくか、というところを相談・提案して、作っていく。このあたりが、主にプリセールスエンジニアとしてやっていることになります。
あと、その中でアドボケイト・エバンジェリスト的な仕事もあるので、「こういう製品があるんだ」と知ってもらい、「ちょっと問い合わせたいんだけど」という入り口を作る。イベントで登壇して、たくさんの人に自社の製品を知ってもらい、「うちでもこれできそうだな」「ちょっと相談乗ってみようかな」という窓口をつくる役割もあります。
アドボケイト・エバンジェリストとしてセールストークをしたり、「触ってみないとわかんないよね」みたいな時があればハンズオンを実施して、「こういう風にやると使えますよ」というところを知ってもらった上で、「自分たちの課題に当てはめてみよう」とか「自分たちのサービスでこの辺だったらできそうだよね」というところから、後押ししたり支援したりする。
そういったことを、今いる会社でのプリセールスエンジニアとして実施しています。
寺田:業務が多岐に渡るということですよね。お話しいただいただけでも結構数ありましたよね。
市川:そうですね。なので1年があっという間に過ぎてしまうみたいな感じです(笑)。
4. 現場エンジニアとの決定的な違いとは?
寺田:では、現場で働いているインフラエンジニアと、プリセールスエンジニアの違いはどのあたりですか?
市川:どちらかというと、現場のエンジニアはある程度仕様が確定して、実際にシステムを作っていくというフェーズになるので、「できる・できない」の0・1の世界に近いというか。「できなかったとしても、完成させなきゃいけない」「納期までに収めなきゃいけない」というようなプレッシャーがあります。
寺田:やるしかないですね。
市川:そうですね。どんどん形作っていく。インフラは「動いて当たり前」なので、動かなかったら大変なことになりますし、それが致命的になってビジネスにも影響します。そういった危機感や大変なところがあります。
プリセールスエンジニアは、現場のエンジニアたちが組む前段階の話なので、どちらかというとサーバーを作るというよりは、パワーポイントで資料を作って説明する、というようなことの比重が多いです。
たまにハンズオンで簡単な仕組みを作ったりして手を動かすことや、PoCでつまづいた時に支援して自分たちでも手を動かしてやることや、社内の専門部署に渡して仲介したりということもあります。
もちろん、現場の知識は活きてきます。現場が分かっているからこそ、厚みを持って提案ができるというか。プリセールスエンジニア一筋でやってきた人が悪いわけではないのですが、個人的にはやっぱり現場を知っているのと知らないのとでは少し違うよな、と思います。現場のエンジニア時代の経験が生きて、いい提案ができていると感じるところはあります。
現場を知っているからこそ、現場のエンジニアと話す時や質問を受けた時に、「あ、現場で多分この辺のことでこうしたいから、今聞いてきているんだろうな」みたいなことも汲み取れたりします。
そういった意味では、私のキャリアの中で現場のエンジニア時代があったからこそ、今プリセールスエンジニアとして活きてるところもあるかな、と感じています。
寺田:プリセールスエンジニアを初めから目指すこともできるのでしょうけど、インフラエンジニアを経験した方の新しいキャリアの選び方、選択肢としてプリセールスエンジニアはとてもいい、という感じなんですかね。
市川:そうですね。現場を知った上でできるというところで、よりいいのではないかと思います。
新卒でなる方もいますが、私としては新卒でなるよりも、1回現場のエンジニアを経験してからなった方が厚みを持てるんじゃないかと思うところはありますね。
5. 「分からない」が「分かる」に変わる瞬間。プリセールスエンジニアのやりがい
寺田:ではここからプリセールスエンジニアの魅力にもうちょっと深く入っていきたいなと思うんですけれども、プリセールスエンジニアのお仕事の面白さはどうですか?
市川:私は今、プリセールスエンジニアの中でも、アドボケイト・エバンジェリストというところが比重としては高いです。あと私、元々教育の現場にもいた人間でもあるので、ハンズオンで教えたり、書籍を書くという形で伝えて教えることもしています。
その中でも「分からない」が「分かる」に変わる、「何から始めて良いのか分からない」から「最初の一歩を踏み出せる」というところです。その一歩を踏み出すご支援をした時が、魅力というか、「こんな私でも誰かの役に立てるんだな」と感じるところです。
教える立場であった時もそうなんですが、「分からない」が「分かる」になって、「じゃあこういうことを進めよう」とか、ネクストアクションにつながることが一番、やりがいに感じました。
寺田:永江さん、これはどうですか?何か悩まれていたり、問題を抱えているお客様が一歩踏み出すことって、やはり難しいんですか?
永江:「どうしたらいいのかわからない」みたいなことは、フェーズとしてあるんですよね。そんな時に、もちろん技術的なこともそうなんですが、それだけじゃなく、もうちょっとしっかりお客様の方に寄り添って教えてくれるような存在。それも、ある意味プリセールスエンジニアとして必要な役割だと思います。課題解決に向けて、一歩踏み出す力にはなってくれる役割ですね。
寺田:この番組でも「インフラエンジニアとして技術も大事、でもコミュニケーション力も大事」、みたいなところは何度もお伝えしてると思います。そのコミュニケーション力だったり、お悩みを言語化できる、因数分解できる力みたいなのが、やはり重要なんですかね、プリセールスエンジニアには。
市川:そう思います。特に私はエンジニア畑にいた人間でもあるので、エンジニアの人たちとやり取りする時は、エンジニアの立場で考えられるというか、その経験を活かして寄り添えるっていうのは1つの強みだと思います。
とは言ってもですね、IT業界というのは技術はどんどん進んでいくので、私が経験したことで寄り添える場合もあれば、経験していないことを「一緒に頑張っていこう」というパターンもあるわけですね。クラウドネイティブの分野とかは、私がプリセールスになってから進んだ技術だったりするので。
当然、私もまだまだ弱いところもあるので、「そこは一緒になって考えていきましょう」みたいな寄り添い方もあります。自分も勉強しなきゃいけないし、キャッチアップもしていかなきゃいけない。やはり、技術のキャッチアップっていうのは常にしていかないといけない。
経験したことは、いかようにも寄り添えるんだけど、当然経験していないことも出てくるわけで、そこのアプローチが時に大変だったりもします。でも、そういう時は、社内の仲間や専門部門の人たちに助けをもらったりしながら、一緒にチームも含めて解決していきます。「三人寄れば文殊の知恵」じゃないですけど、そういうのを活かしつつやれるっていうのが、魅力の1つでもありますね。
寺田:「自分で、どこまで面白がって技術をキャッチアップしていけるか」みたいなところが重要だよと番組でもお伝えしているんですけど、「問題解決する仕事」にシフトしたとしても、そこの重要性って変わらないんですね。
市川:そうですね。プリセールスエンジニアになっても、現場感がちょっと薄れちゃうことが不安になったりするんですよ。そこで、副業でそういった現場を経験していた時期もあります。
寺田:ええ!わざわざ副業で現場に出向いてたんですね。
市川:一歩下がった形にはなるんですけど、もう少し手を動かしたいし、現場慣れしてる人たちと一緒に少し勉強させてもらう、というような形で一時期やっていたこともあります。
そうすると、また寄り添い方も変わってくるなという形で、一応プラス思考でやってた時期もあります。
寺田:永江さん、そこまでの努力が重要なんですね。
永江:そうですね。本当に常に新しいことを、現場感を、みたいな話が出てましたけど、それを維持するのは本当に大変だと思いますね。
6. 技術を極め、伝える。エンジニア・エバンジェリスト・教育者の3つの顔
寺田:今のキャリアを選んでよかったな、プリセールスエンジニアになってよかったな、って感じる瞬間ってありますか?
市川: あまり自分では意識していなかったのですが、「伝えて教える」ということを色々な形で表現できている点ですね。たまたま今、環境に恵まれていることもあり、書籍の執筆やイベント登壇など、様々な場面で「伝える」「教える」機会があります。
もちろん、アーキテクトとしてお客様の課題を解決したり、サービスを知ってもらったりする際にも、この「伝えて教える」ことを常に心がけています。それを楽しみながら実践できているのが、一番「よかった」と感じる部分ですね。 生きがいとまでは言いませんが、日々ワクワクしながら仕事に取り組めています。
寺田:楽しいですか?伝えること。
市川:そうですね。今は、専門学校などで学生に教えているわけではありませんが、一時期教えていた時に、「先生の授業を受けてインフラエンジニアを目指そうと思いました」と言ってもらえたことがありました。私の授業が誰かの人生の選択肢になり、人生を変えるきっかけになれたのかなと思えた瞬間で、技術教育者として非常に嬉しかったですね。
そういった経験もあるので、これからも「伝えて教える」ことを色々な形で続けていきたいと思っています。書籍やプレゼン、ブログ記事など表現方法は様々ですが、それらをまんべんなく実践できている現在の状況は、自分にとって非常に良い状態だと感じています。
寺田:永江さん、大事ですよね。この伝えてくださる方って。
永江:そうですね。本当にできる人って多くないんですよね。技術のことが分かって、伝えることもできる。両方持つのはすごく難しいので、できる人はやはり少ないですね。
市川:一時期、自分の中に「エンジニア」「アドボケイト・エバンジェリスト」「技術教育者」という3つの役割が存在していました。
技術を極めないと、人に伝えることも教えることもできません。どこが欠けても成立しないため、この3つのバランスを取るのが常に難しいと今でも感じています。
その中でも一番の核となるのは、やはり「技術を極める」ことです。これが最も大変なのですが、いかに技術をキャッチアップして自分の中で腹落ちさせ、それを分かりやすく伝えて相手の「次の一歩」につなげられるか。そこが一番難しいところですね。
寺田:技術も極めるっていうのは、新しいことも知って磨き続けるってことですもんね。なんか「極める」って言うと、1個の技術を、知識を深めてそれだけをできるようにする、みたいな感覚もあると思うんですけど、インフラエンジニアもそうじゃないですもんね。
市川:最近はインフラエンジニアの領域も広がっています。以前はサーバー構築が中心でしたが、今はプログラミングの知識もあった方が良いなど、求められるスキルセットが変わってきています。
そこで「次のキャリアをどうするか」と悩む方も多いですね。私もプログラミングはほぼできない中で、いかに自分の得意な領域を伸ばしていくか考えた時期がありました。その結果、自然と今のプリセールスエンジニアという形に落ち着いたのだと思います。 今は生成AI時代ですので、苦手な部分をAI活用によって補えるのではないか、という明るい未来も期待しています。
寺田:そうなんですね。じゃあ、やはり今惹かれているのはAI技術っていうところも結構大きいんですか?
市川:意識はしていますが、変化の激しい分野ですので予測は難しいですね。今、流行っている技術が数年後には覆ることもありますから。
特にAIが進化して人間に近づき、AGI(汎用人工知能)やASI(人工超知能)といったレベルに達した時にどうなるのか。まだ時間はかかると言われていますが、エンジニアのあり方そのものが、問われるような変化が起きるかもしれません。
ただ、いずれにせよAIとは共存していく必要があるので、キャッチアップし続ける姿勢は常に持っていたいですね。
寺田:インフラエンジニアからプリセールスエンジニアっていう道もあって、永江さんの場合はそこから経営者という道に行かれたじゃないですか。
それでもやはり新しい技術はキャッチアップされてて、今はAIもキャッチアップされているものなんですか?
永江:市川さんほどじゃ全然ないですけれども、経営判断の中でどういう事業戦略にしていくであったりとか、どういう技術をエーピーコミュニケーションズのみんなに身につけていってもらった方がいいかとか、それは利益としてどういう風になっていきそうなのか、みたいなところを考えるためには、何も知らないわけにはいかないですね。ある程度のトレンドみたいなところは、概要レベルでは話ができるようにしないといけないですね。
市川:この業界にいる限りは、技術はある程度はキャッチアップしていかないといけないっていうのは、暗黙の了解ではあると思います。
寺田:そういうことですね。大なり小なり解像度の高さ低さはあれ、技術は捨てられないっていうことですね。
市川:キャッチアップはしていかないと、っていうとこですね。
7. 技術が好きで、失敗経験がある人こそ向いている?プリセールスの適性
寺田:最後に、プリセールスエンジニアという新しいキャリアの選び方、どういう方が選んでいけるのか、そういうところをお聞きしたいなと思うんですけれども、どうでしょう?
プリセールスエンジニア、どういった強みを持っている方とか、どういった方が向いてるって思いますか?
市川:そうですね。私の場合は、プリセールスエンジニアの中でもアドボケイト・エバンジェリストとしての色が強いという特殊なケースではありますが、やはり共通して言える大前提は「技術が好き」ということです。新しい技術をキャッチアップすることに喜びを感じ、ワクワクできる人が向いていると思います。
また、現場でのエンジニア経験を活かしつつも、これまでのように「手を動かす」頻度が下がることを許容できるかどうかもポイントです。 「とにかく技術を突き詰めたい、手を動かし続けたい」という方は、そのまま現場のエンジニアを続けるのが良いと思います。一方で、「もう少しお客様に寄り添いたい」「コミュニケーション力を活かしたい」「これまでのキャリアやスキルを別の形で活かしたい」と考えている方には、プリセールスエンジニアは非常に良い選択肢ではないでしょうか。
もちろん、プリセールスエンジニアになっても、技術のキャッチアップは必須ですし、新しいことはどんどん取り入れていく必要があります。 「技術が好きで現場経験がある」という強みを、少しセールス寄りのポジションで活かしてみる。そういった柔軟な考え方ができる方であれば、全く問題なく活躍できると思います。
寺田:永江さん目線だといかがですか?どういう方がプリセールスエンジニアに向いてると思いますか?
永江:コミュニケーション力は絶対的に必要ですよね。技術のことはもちろん分かっていないから、お客様や関係する人たちとのコミュニケーションをうまく取っていくことが大事になってくるので。その辺、苦手なエンジニアの方も結構多くいらっしゃるんですけど、得意な方はすごい差別化要素にはなるかもしれないですね。ビジネスで言うと、どうしても必要な部分には上がってきますので。
寺田:あと、言語化力みたいなところも必要なのかなと思ったんですけど、どうですか?
市川:そうですね、やはり難しいことを難しく言ってもお客様には伝わらないので、そこをいかに噛み砕いて、分かるように、分かりやすくっていうのは常に心がける必要はあるかもしれないですね。
難しく考えちゃうと「あ、やっぱもう自分にはできそうにないから、いいや」ってなっちゃうんで。だけど、もう少し分かりやすく、そして「やってみましょうよ」みたいな形で後押しできると、「そういうなら、ちょっとやってみようかな」みたいな。
寺田:今のがめちゃめちゃ重要なところかもしれないですね。
エンジニア同士とかだと、技術が分かってる前提で会話をするのは、楽でもあったりとかすると思うんですけど、相手に合わせて、相手に伝わるように、相手の状況ってどうだろうな、どれぐらいの知識持っておられるだろうなっていうところを、推測しながら話をするのは、言語化もそうですし、相手の状況を察する力みたいなところもある。
広い意味でのコミュニケーションが、そこは必要になりそうですね。
寺田:下手したら、知識もほぼゼロの方もお客様になるでしょうからね。そこのさじ加減みたいな、察する力、表現の仕方みたいなのはすごく重要そうですね。
永江:そうですね。詳しくないお客様ももちろんいらっしゃいますね。
市川:できるエンジニアの人は、そつなく新しい技術吸収してできちゃうんですけど、私なんかは結構つまづきながら、新しい技術をキャッチアップとかしていくタイプで、多分「自分がつまづくってことは、他の人もつまづくんだろうな」というのが、実はポイントです。
そこを分かった上で、「あ、多分この人ここ分からないんだろうな」という時に、自分も分からなかったから、「じゃあ自分がどうやって分かったのか」というところを補いながらやると、「あぁ!」ってなるので。
逆に、優秀なエンジニアほど、その辺が分からなかったりするかもしれないので、「自分もどう乗り越えたか」っていうところを分かった上で、後押しができるっていうのは、ある意味、私のような未熟なエンジニアでも良かったりするところはありますね。
寺田:でもこれめ、ちゃくちゃ朗報じゃないですか?
技術力が必要な職業って思うと、いかに技術を磨かなきゃ、そして優秀なエンジニアにならなければって思うと思うんですけど、「失敗したことが活かせる職業がある」というのは、お聞きしていてすごく朗報だなと思いました。
市川:なので、そういうことが自分に合うなと思えば、プリセールスエンジニアっていう道も、アドボケイト・エバンジェリストっていう道も、あるのではないかなと思ったりはしますね。
寺田:最後にプリセールスエンジニアを、現在目指すメリットみたいなところをお聞きしたいなと思ったんですけど、こちらいかがですかね、
市川:そうですね、やはり人とのコミュニケーションが好きで、そして技術が大好きで、それをいかに教える、そして提案するっていうことが寄り添ってできるかっていうところ。ここを目指すのが楽しみであり、面白みでありっていうところなのかなっていう風に思います。
寺田:どうですか?永江さん目線では。
永江:そうですね。これは本当に向いているとか向いてないとかは、ある職種だと思いますので、技術のことも好きだけれども、コミュニケーション力もそれなりにありますみたいな方とかは、選択肢の1個としてあってもいいんじゃないかなとは思いますね。
寺田:前にゲスト来ていただいて、コミュニケーション力を買っていただいて広報になったみたいなお話もありましたが、このプリセールスエンジニアっていう選択肢もあるってことですよね。
永江:そうですね。
寺田:次回もご登場いただくのですが、その時は「どう選択してこられたか」など、もっとリアルなご自身の経験をお話をしていただけたらなと思っております。
プリセールスエンジニアを目指したい方、キャリア悩まれている方、そちらも期待してていただけたらなと思います。では市川さん、次回もよろしくお願いします。
8. クロージング
寺田:さて、永江さん、本日市川さんをお迎えして、前編やってきましたが、いかがでしたか?
永江:プリセールスエンジニアについてお話しいただいたんですけれども、業界の中には「プリセールスエンジニアってこういうものかな」というイメージを持っている方も、それなりにいらっしゃると思うのですが、ただ1個の形じゃないんだなっていうところが、今日の話で伝わったんじゃないかなって気がします。
いろんなやり方があるという、興味深い話を今日はしていただいたかなと思います。
寺田:そうですよね。市川さんの場合は、エバンジェリストなど伝えるお仕事に比重があるとおっしゃってましたけど、問題解決が得意な方であれば、そういったところも多いでしょうし。
永江:営業色が強いというイメージを持ってる方も、それなりにいらっしゃるんじゃないかなと思うんですよね。
寺田:能力の持ち方で、生かし方も変えていけるっていうのはすごく魅力ですよね。
永江:あとは、それは企業によりけりなところも結構あると思います。
寺田:次回もご登場いただきますので、そちらもお楽しみにお待ちください。
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