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2020/04/07

極める・伝える・教えるの調和──新たなロールモデル(DevEdu)創出への挑戦

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APCでテクニカルエバンジェリストとして活躍する市川 豊。彼の活躍は案件だけにとどまりません。多岐にわたる活動を支える市川の価値観と、彼が目指す新しいロールモデルについてお話しします。

大切にしているのは「極める・伝える・教える」の調和

CKA(Certified Kubernetes Administrator)・CKAD(Certified Kubernetes Application Developer)・KCM100(Kubernetes&Docker認定)といった技術者認定資格を有する市川は、技術支援アドバイザーとしてCloudNativeに関する案件や業務に携わりながら、さまざまな活動を行っています。

技術書の執筆(*1)やWeb連載記事(*2)の寄稿、「CloudNative Days Tokyo 2019/OpenStack Days Tokyo 2019」や「July Tech Festa 2019」といった技術イベントでの登壇。他にも、専門学校や企業様向けプライベートトレーニングの講師、「RancherJP」や「Cloud Native Deep Dive」などの技術コミュニティの運営、海外カンファレンス参加など……。

なぜこれほどたくさんの活動に携わっているのでしょうか。

市川 「私の中で一番大事なことは、『エンジニア』『エバンジェリスト・アドボケート』『技術教育者』の三つの調和を取ることなんです。この三者が自分の中にいて、常にせめぎ合っています。

まず、新しい技術についての知識を取り入れ続け、それを実際に使って経験を積むことで、『エンジニア』として技術を極める。そしてその知識や経験をもとに、『エバンジェリスト・アドボケート』として社内外の人たちに技術の可能性や使い方を伝える。また、その技術が使える技術者を増やすために、『技術教育者』としてエンジニアやエンジニアの卵たちに教える。

これらを一つひとつ実践していった結果、今の活動につながりました」

一連の活動の中で市川が心掛けているのは、実際の案件で得られる知見やノウハウ
=「実(じつ)」を重んじることだと言います。

市川 「知識だけでも伝えたり教えたりすることはできます。ただ、エンジニアとしての自分がそれを許さないというか……。警笛を鳴らすんです。自分がエンジニアだけをやっていたころは、現場の実を知ることが何より大事だと思っていたので」

*1共著:「コンテナベースオーケストレーション」(翔泳社)、「RancherによるKubernetes活用完全ガイド」(インプレス)
*2連載:「Rancherってどんなもの?」第1回~第3回(ThinkIT)

経験値が増える一方、減る学習時間。「今のままでいいのか?」という焦り


▲Cloud Native Meetup Tokyoでの登壇

ミュージシャンやアーティストに傾倒し、新しいモノを生み出す彼らの生き様に憧れを抱いていた幼少期。そのころに芽生えた「手に職を持ち何かをつくる側でありたい」という想いと、「憧れの彼らが愛用していたマッキントッシュ(Mac)を使いたい」という想いから、ITエンジニアを目指すようになっていました。

大学時代は、英文学を専攻しながらある程度単位を取った後、学部に関係なく受講できるコンピューター系の授業ばかりを受けていました。卒業後はデザイン事務所でフロントエンジニアとしてのキャリアをスタート。IllustratorやPhotoshopでWebデザインを行ったり、HTML、CSS、JavaScriptなどを書くかたわら、いつしか会社のサーバ管理も任されるようになったのです。

市川 「それまではWebサーバの上で動くホームページなどの“役者”をつくってきましたが、その役者を動かす“舞台”となるインフラ、とくにLinuxにも興味が湧いてきました。フロントもインフラも両方わかればエンジニアとして強くなれると思い、勉強し始めました」

6年間務めたデザイン事務所を退職した後、そのころ出会ったエンジニアたちとIT会社を起業。約9年間、主に官公庁の案件でインフラエンジニアとしてのスキルを磨きました。

市川 「いろいろな案件に携わりましたが、その中でも印象的だったのが、初めて経験したアジャイル開発の案件です。スピード感や無駄のなさ、柔軟性など、これまでのウォーターフォールにはないアジャイル開発の良さを実感しました。

よく『アジャイル開発は良い』と言われますが、いくら本を読んでも、体験してみないとその本当の良さはわかりません。この経験が“実(じつ)”を重視するようになった原体験かもしれません」

こうしてエンジニアとして経験を積む一方で、「今のままでいいのか?」という焦りを感じ始めます。起業して6年ほどたったころのことでした。

市川 「目先の仕事をこなすことが主軸になってしまい、新しい技術をキャッチアップする時間が取れなくなっていました。

性格的に、常に新しいことを学んで変化していないと焦りを感じてしまうタイプな上に、他のエンジニアに負けたくないという負けん気も強いんですよ。実際は負けっぱなしなんですけどね(笑)。だから、私がこうしている間にも他のエンジニアはどんどん新しいことをやっていると思うと落ち着かなくて……。この先どうするべきか、とても悩みました」

“エンジニアだけ”という枠を超えるきっかけ


▲IT専門学校での講義の様子

そんなとき、「技術教育者」と「エバンジェリスト・アドボケート」につながるふたつのきっかけが訪れました。ひとつは専門学校での講師を依頼されたこと。もうひとつは200人規模のイベントに登壇したことでした。

市川 「たまたまIT系の専門学校から『Linuxを教える人がいないのでお願いしたい』というお話があり、受けることにしました。人に教えることによって、自分がちゃんと理解しているか確かめられるので、良い機会になると思ったんです。

それに何も知らない学生にゼロから教えるって、駆け出しエンジニアを相手にするよりもある意味ずっとハードルが高いし、そういう子たちに興味を持たせる授業をするのは、すごくチャレンジングでおもしろそうじゃないですか」

実際にやってみると、本気でエンジニアを目指している生徒もいれば、初めの一歩を踏み出すことにちゅうちょしている生徒までいて、思った以上に差がありました。動画を教材として使ったり、座学だけではなくハンズオンを多く取り入れたりするなど、授業内容の組み立てに試行錯誤。

しかし、そんな苦労も生徒からのこんなひと言で救われます。「先生の授業を受けて、インフラに興味を持ちました。その道を目指そうと思います。」──これが技術教育者としての一番のやりがいだと市川は言います。

もうひとつのきっかけは、200人規模のイベントへのLT(ライトニングトーク) 登壇です。これが、エバンジェリスト・アドボケートへの大きな一歩となりました。

市川 「当時出始めたDockerという技術に将来性を感じたんです。ただ、新しい技術の導入が難しい官公庁案件で取り入れることは厳しい。でも新しい技術を学びたいし試したい……。

できることから着手しようと、日々勉強したことを社内で展開する勉強会を始めました。そのあと社外向けの勉強会を経てコミュニティをつくり、Dockerの可能性やおもしろさを伝える活動を始めました」

自分で社外向けのコミュニティを運営するかたわら、他のイベントにも積極的に参加。その中に200人の参加枠が即日満席になったDockerのMeetupがありました。

市川 「どうしてもそのイベントに参加したかったんですが、抽選に当たる可能性はかなり低いだろうとあきらめかけていました。そんな時に知り合いの方から『LT枠なら参加できるよ。登壇してみなよ。』と勧められました。そう簡単に言われても、会場はGoogle日本オフィスで、YouTubeでも配信される。参加者もハイレベルな上に、登壇者は実践でDockerを活用しているすごい人たちばかりでした。

自分はと言えば、初心者向けのハンズオン勉強会を開催しているとはいえ、実務経験はゼロ。場違いだと尻込みしていたんですが、その知り合いの方が背中を押してくれたので、意を決して登壇することにしました」

猛烈なプレッシャーの中で登壇したのは5分のLTでしたが、ここで踏み出した一歩はエバンジェリスト・アドボケートとしての大きな一歩となりました。

市川 「あのときに身についた度胸と出会った同志たちのおかげで、技術を伝える活動をより積極的にやれるようになり、今の自分があります。あのときに背中を押してくれた知り合いの方は、今でも恩人だと思って感謝しています」

これからのIT企業には、教育を軸としたロールモデル(職種)が必要


▲市川が考える新たなロールモデル

当時の職場で「エンジニア」と「エバンジェリスト・アドボケート」「技術教育者」を両立させるのは難しいと考えた市川は退職を決意。個人事業主でやっていくことを考えていたところ、APCと出会いました。

市川 「APCにはテクニカルエバンジェリストという職種があり、SI会社でこういった職種があるというのは珍しいので興味が湧きました。この職種であれば、私が大切にしている“3つの調和”を取ることもできます。クラウドネイティブを進めていくという技術戦略にも共感しましたし、さらに外国人講師が常駐した環境で英会話も学べるということもあり入社を決めましたね」

入社して2年目となった今、市川はAPCでやってみたいことがあると言います。

市川 「直近での目標は、母校を始め大学の教壇に立つことです。学生時代に大学で受けたコンピューター系の授業が、自分のキャリアに少なからず影響を与えたので、後輩にも同じ影響がおよぶ講義ができれば理想的です。中長期的には、数年前からDevRel(Developer Relations)という言葉が出てきましたが、それと同じようにDevEdu(Developer Educations)という新たなロールモデルをつくりたいと思っています」

企業における技術に関する知見やノウハウの蓄積方法は変えていく必要がある。そう市川は考えています。

現状では、個々のエンジニアの経験や学習に頼りすぎていて、組織的に対応できている企業は多くありません。

意欲的なエンジニアたちは、学習した知識や現場で培ったノウハウを横展開しようと頑張っています。ただ、そのエンジニアの稼働がひっ迫してしまうと横展開は止まってしまうし、彼らが会社を辞めてしまえばその知識やノウハウは会社に残らなくなってしまいます。

市川 「これを解消するためには、組織の中に“教育を軸としたロールモデル”が必要です。

つまり、お客様に技術を提供するエンジニアとは別に、技術を経験・習得し教育に還元することを専任とするエンジニアが必要になってきます。

案件に参画する際も、最前線に立ってしまうと後者の役割をまっとうできなくなるので、あくまでも教育に還元するための経験を得るという認識をチーム全体で持つことが重要です」

こうすることで、教育コンテンツは確実に蓄積され、そのコンテンツは社内だけではなく、社外向けの有料トレーニングや採用を促進させるためのワークショップなどにも活用できます。

また、教育機関(専門学校や大学など)と連携することで、彼らが抱える“新しい技術を教える講師の不足”という課題の解消にも寄与できるし、新たな雇用の創出にもつながるかもしれません。

市川 「クラウドネイティブだけでなく機械学習やIoTなど、さまざまな技術分野があります。その数だけこのロールモデルのエンジニアがいれば、それだけ組織の資産は増えます。また、このロールモデルがいろいろな企業で生まれれば、そういったエンジニア同士がコラボレーションして新しい価値が生まれるかもしれません。APCでその成功事例をつくりたいと思っています」

「教育を軸とした役割を担うエンジニアが集まる『DevEdu MeetUp』などがどこかで開催され始めたら、私の時代かも?ですね(笑)」──市川の挑戦は、まだまだ続きます。

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