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2025/12/18

エンゲージメントはスコアを見るな、推移を見よ。現場GMが挑む「働きがい」のある組織改革

エーピーコミュニケーションズ(以下、APC)では数年前より、単なる福利厚生の充実などの「働きやすさの向上」にとどまらず、「仕事への価値や誇り」を醸成する組織改革を推進しています。

「働きやすさ」から「働きがい」へ。APCがエンゲージメント向上に取り組むワケ

この全社的な取り組みを現場でリードするのが、元ピザ屋店長という異色の経歴を持つGM、平林です。当初は「そもそもエンゲージメントとは?」と戸惑っていましたが、スコアという「数字」ではなく、その裏にある「人の感情」と向き合い続けることでチームに変革をもたらしてきました。

「スコアを見て一喜一憂してしまう」「具体的なアクションにつながらない」といった悩みを抱えるリーダーにオススメの実践論です。

平林 雄太 (ヒラバヤシ ユウタ) iTOC事業部 EDT部 GM
2011年に異業種(ピザ屋店長)からIT業界へ転身し、インフラエンジニアとしてキャリアをスタート。監視・保守・運用業務を経験し、特に運用設計を得意領域とする。2020年からはマネージャーとして実務経験を積みながらチームを牽引。2024年に複数プロジェクトを管掌するGMとして、マネジメント力と現場技術の両面からプロジェクトを成功へ導く。

なぜ「働きがい」が必要なのか?腹落ちすることから始まった

―― GMとして複数のプロジェクトを管掌する中で、平林さんが「エンゲージメント」に着目したきっかけは何ですか?

平林:正直に言うと、最初は「エンゲージメント」という言葉の意味さえよくわかっていなかったんです(笑)。

「働きがい」を高めるという経営方針はあるものの、自分自身がそれを正しく理解できていない。まずはそこが課題だと感じ、全社の推進役である戦略人事本部の澤田さんに、「そもそもエンゲージメントとモチベーションって、何が違うんですか?」と素直に聞きにいくことから始めたんです。

澤田さんから、組織力向上プラットフォーム『Wevox』を運営するアトラエ社のエンゲージメント実践認定プログラム「CEEP」を勧められ、受講してみたのが活動の始まりです。

―― 「CEEP」の取得を通じて、どのような気づきがありましたか?

平林:一番の収穫は、エンゲージメントを「自分の言葉」で定義できるようになったことです。モチベーションが個人の内側から湧き出るものであるのに対し、エンゲージメントは「組織と自分とのつながり」。つまり「企業への愛着度」のことなんだと、腹落ちしました。
この知識を得たことで、エンジニア組織において「エンゲージメント」が重要だと考えるようになりました。

―― どのような点で感じたのでしょうか?

平林:当社のビジネスの主役は、あくまでエンジニアです。高い技術力を持った彼らに、長く高いパフォーマンスを発揮してもらうためには、「ここで働きたい」「APCでエンジニアを続けたい」と思ってもらうことが欠かせません。だからこそ、技術力の向上と同じくらい、会社に対する愛着心を高めてもらうことが重要だと考えるようになったんです。

コラム発信と座談会。手探りの活動が「共通言語」に変わるまで

―― ご自身の中での概念の理解を深めた後、活動の「最初の一歩」は何ですか?

平林:事業部の月1回の社内報で、「エンゲージメントコラム」を書き始めました。「エンゲージメントとは何か?」「スコアをどう捉えるべきか?」など、私が認定プログラムで学んだことをテーマに書いていて、今ちょうど9回目を掲載したところです。

自分の学びを定着させるためでもあったのですが、それ以上に、同じような悩みを抱えているリーダーたちのヒントになればと思ったんです。実際に他部署のGMから質問を受けたり、普段接点の少ないメンバーから感想をもらったりと、組織内にエンゲージメントの重要性が浸透し始めている手応えを感じています。


▲エンゲージメントコラム

―― その後は、どのような活動に取り組んだのでしょうか?

平林:特に力を入れているのは、『Wevox』のスコアを活用したチームづくりです。具体的には、所属する部門のエンゲージメント向上を目的に、マネージャー座談会を実施しています。
これまでもツールは導入していましたが、正直、毎月のスコアを記録しているだけで活用しきれていなかった。そこで、マネージャーたちと膝を突き合わせて、「この数字から何が読み取れるか?」「私たちの課題は何か?」を徹底的に議論したんです。


▲マネージャー座談会でのテーマ例

その結果、私たちが向き合うべき本質的な課題は「上司との関係性」だと定まりました。 EDT部では、多くのエンジニアは顧客先に常駐しているため、日々のやり取りはどうしても顧客がメインになります。そのため、自社の上司とは物理的にも、そして心理的にも距離が開いてしまいがちでした。技術者として価値を提供するのはもちろんですが、「APCの一員である」という帰属意識を持ってもらうためには、まず私たち上司との「関係性の質」を変える必要があると考えました。

―― 「集中すべき課題」を定めたことで、具体的なアクションが見えてきますね。

平林:そうなんです。最も核心的なポイントが明確になったことで、各マネージャーが自分のプロジェクトに合わせた実行計画を立て、行動してくれるようになりました。「エンゲージメント」が、部の共通言語になってきていると手応えを感じています。

それから、少しずつではありますが、マネージャーのメンバーに対するコメントの質が変わりました。メンバーの「心の内」に触れるような議論ができるようになってきたのです。以前は「あのメンバーは60点だったのでフォローします」といったスコア管理のような報告が多かったのですが、今は「点数は低いけれど、話してみたら前月より意識は前向きになっている」「数字には出ていないけれど、こんな葛藤があるようだ」と、一人ひとりのストーリーが見えるようになってきたんです。

「褒める」が正解とは限らない。数字の裏にあるストーリーを探る

―― エンゲージメントスコアを、具体的なアクションにつなげる際、平林さんが最も大事にしていることは何ですか?

平林:最も重視しているのは、現時点での「点数」ではなく、時系列での「推移」を見ることです。大前提として、スコアは回答時の体調や気分、個人の回答のクセにも左右されますから、ある一時点の数字だけで良し悪しを判断することはできません。

またスコアだけで判断すると、本当の課題に気づけず、間違った対策を取ってしまうケースもあります。実際にあった例ですが、「承認」項目のスコアが低いメンバーがいました。ここで短絡的に「褒める回数を増やそう」とするのは得策ではありません。

本人と対話をして理由を深掘りしたところ、「依頼されて資料を作成したのに活用されず、徒労感を感じていた」ことがわかったのです。この場合、必要なアクションは「褒めること」ではなく、「成果を活用する仕組みを作ること」や「使用しなかった意図を誠実に説明すること」でした。
これは一例ですが、スコアをきっかけとして対話を重ねることで、初めて真の課題に辿り着き、効果的な解決策が打てるようになるのだと思います。

―― 「低いスコア」という数字だけを見て判断するのは危険だと。

平林:そうです。だからこそ、注視すべきはスコアの「推移」です。右肩上がりなのか、右肩下がりなのか、はたまた横ばいなのか。そして、そこにある一人ひとりのストーリーを見ていくことが大事だと思っています。

マネージャーたちには常々、「スコアは参考値に過ぎない。その数字がついた背景を知るためのツールとして使おう」と伝えています。組織風土の改革は、一朝一夕に成果が出るものではありません。そこは長期戦だと捉えていて、最低でも半年単位で推移を見ています。

そして最も大事だと思うのは、エンゲージメントでチームを引っ張っていく人の「熱量」です。リーダー自身がエンゲージメント活動の重要性を心から信じること。その意思こそが、チーム全体を巻き込んでいく力になると思います。

特効薬はない。人と向き合うプロセスを楽しむ

―― 今後は、どのようなエンゲージメント活動に取り組んでいきたいですか?

平林:現在取り組んでいるのは、離職防止やモチベーションケアといった、いわば「守り」の活動です。しかし、これからは「攻め」の領域にも踏み込んでいきたいと考えています。

エンゲージメントが高まれば、生産性や業績も向上するという相関関係はすでに実証されています。単に「仲が良い組織」で終わらせるのではなく、データを戦略的に活用し、事業成果に直結する「強い組織」を作っていきたいですね。

―― 最後に、エンゲージメント向上に壁を感じているリーダーや、スコア活用に悩んでいるリーダーにメッセージをお願いします。

平林:私自身の経験からお伝えできるポイントは3つあります。
1つ目は、リーダー自身の「腹落ち」と「発信」です。私自身、まずは自分が学び、コラムを書くことから始めました。これがチーム内に「共通言語」を作る第一歩になります。

2つ目は、スコアの「点数」に一喜一憂しないこと。注視すべきは「推移」です。数字そのものではなく、その裏にある「なぜ?」というストーリーを対話によって紐解いてください。そこから組織が抱える本質的な課題が見えてくるはずです。

そして最後は、すぐに成果を求めず、この活動自体を「楽しむ」ことです。人と組織の問題に特効薬はありません。最低でも半年はかかると割り切り、トライ&エラーを繰り返す。メンバーの感情と真正面から向き合うプロセスそのものを、ぜひ前向きに楽しんでほしいと思います。

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