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2020/09/01

年間100本以上のブログを書くエンジニアが大切にするのは「恩送りの気持ち」

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Ansibleのエキスパートとして案件に携わりながら、テクニカルエバンジェリストとしてもブログを始めさまざまな形でアウトプットをしている横地 晃。さらには人事制度策定に関わったり新組織を立ち上げたりと多方面で活躍しています。横地はこれらの原動力を「恩送りの気持ち」だといいます。

キャリアの始まりは年賀状の住所登録?!小学生から始めたワープロいじり


▲ブログを始めSNSなどで使用している金魚のアイコンは、いまや横地のトレードマークです

横地が“キーボードと画面の付いた機械”を触り始めたのは小学生のとき。家にあった誰も使っていないワープロをいじり始めたのがきっかけで、年賀状の住所入力が最初の仕事でした。

横地 「中学生になったある日、父と一緒に家電売り場へ行きました。そしたら、見慣れない“ワープロらしきもの”があったんです。

私のは画面がモノクロなのに、それはカラーの画面だったんで『なんかすごいのがあるぞ!』って興味を引かれて。それがパソコンとの出会いでした」

中学2年でパソコンを手に入れた横地は、そのままインターネットの世界に足を踏み入れました。

横地 「そこからインターネットに興味を持ち、親に頼んでプロバイダを契約してもらったんです。

当時、インターネットでの交流は『BBS』『掲示板』と呼ばれるシステムしかなかったので、これをつくるためにプログラムのサンプルコードを探して自分で掲示板を立ち上げ、大人たちとやり取りをしていました」

もともと、ものをつくることが好きで大工や設計士になるという夢を持っていた横地。パソコンとの出会いによって、つくる対象が木や金属を使ったものから、デジタルなものへと変わっていきました。

横地 「小学生くらいから身の回りにパソコンを使える人はいなかったので、『パソコンを使える』ということは特別なことかもしれないと思っていて。

中学生のころにはパソコンを使った仕事につきたいと、漠然と考えるようになっていました」

高校に進みエンジニアになろうと決めた横地は、その後の進路としてIT専門学校を選択。専門学校を卒業した後は、地元の小規模なSIerに入社しました。

その地域の役所や鉄道会社など、ITのお困りごとを解決するという地域に密着した会社で、システム開発やサーバ構築、ネットワーク構築など幅広い業務を行っていました。

横地 「私はネットワークやサーバなどのインフラが好きだったので、そういった案件を積極的にやらせてもらいました。

ただ20人程の会社だったこともあり、一人ひとりの守備範囲は広く、開発案件を担当することも。おかげでプログラミングなどにはあまり抵抗を感じず、今でもそのスキルが役立っています」

転職を決意したのは入社して9年半が経ったころ。30歳の区切りを前に、より多くのネットワーク案件に携わりたいという想いからでした。APCを選んだのは社内大学“APアカデミー”があったからだと横地はいいます。

横地 「自分がその制度を使えるという魅力のほかに、そういう体制を敷くマインドやエンジニアの成長を本人任せにしないというスタンスにも引かれ、入社を決めました」

年間100本以上のブログを書く継続的なアウトプットを支える欲求とは


▲横地が執筆に参加した技術書籍と記事を寄稿した技術雑誌

APCに入社した横地が最初に配属されたのは、データセンターネットワークの設計構築を担うチームでした。

横地 「この時期はネットワークができる喜びに満ち溢れていましたね(笑)。規模の大きさや、仕事の進め方の違いなど、あらゆることが新鮮で。

上司から『ちょっとこれややこしい案件なんだけど……』って声を掛かけられると、ワクワクしてテンションが上がっていました。

技術については本で学べますが、どう使うのかは実戦でしか得ることができません。そういった学びがたくさんあって本当に楽しかったです」

その後、横地はネットワーク自動化を自身の専門分野とし、新しい技術の情報収集や検証などを担当するように。同時期に総合職から「プロフェッショナル職(以下、プロ職)」へと転向しました。

▼プロフェッショナル職についてと、横地が職種転向した際のストーリーはこちら
エンジニアがエンジニアであり続けるキャリアを支える――プロフェッショナル職制度

プロ職に求められるのは、どのような形であれアウトプットすること。この“アウトプット”に対する横地の考え方は、中学生時代に親しんだ「インターネットの世界観」がベースになっています。

横地 「私がインターネットを始めたころは、今のように情報があふれていたわけでもなければ、SNSなどのコミュニケーションツールもありませんでした。なので、インターネットは『自分でコンテンツをつくる場所』だと思っていたんです。

インターネットでアウトプットすることは、人間が呼吸することと同じくらい当たり前なことという感覚。もともと特別なことだとは思っていなかったんです」

掲示板から始まった横地のアウトプットの場は、2005年ごろから技術ブログへと移っていきました。

横地 「よくブログを書き続けるモチベーションについて聞かれるんですが、最初のころはモチベーションとかとくになくて、当たり前だと思って書いていました。ただ、継続している中で徐々にある欲求が湧くようになったんです」

「自分が持っている情報を、必要としている人に届けたい」──これが「当たり前」のあとに芽生えた欲求だと横地はいいます。

横地 「自分がハマって苦労したことなど自分の経験や情報を伝えることで、同じ苦労をする人の負担を減らせたらいいなっていう欲求です。最近は『自分のためのググれるメモ』という位置づけも持つようになりました。

こんな感じで継続していけば、いろいろな欲求が湧いてきて、自分にとってのブログを書くことの意味合いができていくんじゃないかと思います。

逆におススメしないのは『自分がコントロールできないこと』に重きを置くこと。いいねやコメントがたくさんほしいといった承認欲求を満たそうとすると、自分でコントロールできず継続が難しくなるからです。

とはいえ、そういったフィードバックを貰えるのは、やっぱりありがたいし嬉しいですけどね(笑)」

横地のアウトプットはブログ「てくなべ」だけにとどまらず、社外の勉強会やJANOG Meetingにもたびたび登壇するほど。ほかにも技術雑誌「ソフトウェアデザイン」への寄稿や、「Ansible 実践ガイド 第3版」の執筆などを手掛けています。最近ではYouTubeでの発信も始めるなど、アウトプットの幅はどんどん広がっています。

エンジニア文化をつくるエンジニア──テクニカルエバンジェリスト職の誕生


▲社内表彰「APCアワード」で表彰を受ける横地

2018年、APCにプロ職に次ぐ新たな職種 「テクニカルエバンジェリスト職」が誕生しました。横地が上司や人事に掛け合って新設されたものです。

横地 「掛け合ったというのは大げさで、わがままをいわせてもらって、それを制度という形にまとめてもらったという感じです。

APCは変化することを大切にしていて、実際にいろいろ変化させてきたので、『きっと制度も変えられるだろう』という希望は持っていました」

新しい職種の提案理由は「自分の働きやすい環境をつくりたかったから」──

横地 「もともと『同じ会社のエンジニアには楽しいエンジニアライフを送ってほしい、そういう文化をつくっていきたい』という想いがありました。

『自分の技術で、経験で、技術にこだわっている人を感動させる』というミッションを持つプロ職エンジニアがたくさん集まり、彼ら彼女らの背中をみて自然とできあがる文化もあると思います。ただ、より明確に『エンジニア文化をつくる』というミッションを担う役割があってもいいと思ったんです。

また、自分が望むアウトプットと実業務のバランスも、当時存在していた職種(総合職・プロ職・エバンジェリスト職)の規定にフィットしなくなっていたので、これらの想いを上司と人事に相談しました」

こうしてできたテクニカルエバンジェリスト職は、APCのエンジニア文化をリードしていく立場として「技術で社内風土とブランド力を向上させる」というミッションを担っています。

横地 「自分の言動や振る舞いを通して、『どうすれば楽しいエンジニアライフを送れるようになるのか』を仲間のエンジニアたちに伝えていく。こうすることで、より明確な“APCのエンジニア文化”を醸成していけるんじゃないかと思っています。

あとは、役割を明確化すると、こういうことをやりたい人がアクションを起こしやすくなったり、『テクニカルエバンジェリスト職を目指している』といえば『そういうことがしたいんだね』と周りに理解してもらいやすくなったり。そんな効果もあると思っています」

エンジニアとして対等に向き合い背中を押す「エンジニアリングメンター」


▲技術ブロガーへの一歩を後押しする勉強会「技術ブログを書こう」を開催

こうしてテクニカルエバンジェリスト職となった横地ですが、ひとつの壁にぶつかりました。

横地 「テクニカルエバンジェリスト職として組織文化に関与していく立場にありながらも、それが認知されなくて……。いろいろなチームのミーティングにお邪魔してアピール活動をしたのですが、なかなか実を結びませんでした」

そこで横地は、自分がテクニカルエバンジェリスト職としてやろうとしていることを社内に広めるため、オフィシャルな組織をつくることに。

横地 「オフィシャルでやるためには、目標や体制を決めるなどいろいろと面倒ですが、それを覆せるほどのメリットがあると思ったんです。だからそのハードルを越えようって」

こうして2019年8月に誕生したのが、事業本部長直轄の組織「エンジニアリングメンター準備室」です。エンジニアリングメンターは、一歩踏み出そうとしているエンジニアの成長をサポートする相談役。

学習方法、アウトプット、資格、プロフェッショナル職群の理解、コミュニティ、勉強会、業界貢献などエンジニアライフにまつわるテーマを扱います。

横地 「オフィシャル化したことが功を成し、これまで全然交流のなかった人からもメンティ(相談者)の応募が増えたんです。これまで12名のメンティを受け入れてきました。

中でも一番多い相談は『技術ブログを書きたいけど、どうしたらいいかわからない』というもの。書きたいと思った理由や書きたい内容などをヒアリングして、現状と理想のギャップを埋める方法を一緒に考えます」

メンティのほとんどは「本当はひとりでもできるけど、最後の一歩を踏み出すために背中を押してほしい人」だと分析する横地は、こう続けます。

横地 「メンティは自分で成長できると思っているので、育てようという気持ちは持っていません。どうすれば彼・彼女のスイッチが入るんだろうって考えながら会話をしています。私がそれに気がつければスイッチを押すし、話しているうちにメンティ自身が自分のスイッチに気づくことも。

ちょっとしたきっかけや小さな成功体験を積めば、メンティは自分でどんどん羽ばたいていきます。メンティが勝手に育っていく様子を見るのは、本当に楽しいですよ」

まだ1年目ということもあり試行錯誤しながら進めていますが、すでにひとり立ちしたメンティもいて、今後はメンターも増やしていく予定です。

▼横地がイベントで発表したエンジニアリングメンターに関する資料も合わせてご覧ください
「誰かの Engineering Life を Extend する」を仕事にした話 #JTF2020
 ■登壇資料■
 ■登壇動画■

さまざまなアウトプットに始まり、新しい職種や組織の新設とすべてに共通するのは「エンジニアの役に立ちたい」という想い。なぜこんなにもエンジニア仲間のことを想えるのでしょうか?

横地 「あまり考えたことはないですが……。今、ふとこんなシーンが頭に浮かびました。新卒で入社した1年目のとき、お昼ご飯をおごってくれた先輩がこういったんです。『横地君も先輩になったとき、後輩におごってあげてね』って。恩返しというか、恩送りみたいなことですかね(笑)」

自分が人に恵まれてきたから、自分の手や声が届く範囲の人にも幸せになってもらいたい──そんな想いを原動力にして、横地の「楽しいエンジニアライフを送れる文化づくり」はこれからも続きます。

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