2026/06/30
「AI専門チーム」だからこそ、真に役立つ現場のAI活用支援が可能に エンジニアの価値を高め、培った知見は顧客にも提供
株式会社エーピーコミュニケーションズ(社内事例)
エーピーコミュニケーションズ(APC)のiTOC事業部(Increasing Technical & Organizational Capabilities)は、顧客の本質的な課題に踏み込むことにこだわりながら、ネットワークを中心にクラウド・サーバー・自動化など幅広いITインフラ領域の技術支援を行っています。2024年には全社横断の組織としてAI Ops Enablement(AIOE)を新設し、AI活用によってエンジニアの能力を強化するとともに、その中で培った知見はお客様にも提供しています。今回はAIOEがiTOC事業部内の複数部門と取り組んだAI活用事例をご紹介します。
- AI推進チームの組成から個別ツールの実装まで、AI活用状況に応じて一貫した支援を実施
- 社内AI活用で培った知見とツールを、顧客への提案や活用支援にも展開
- 面接レポート作成時間を最大半減、新人の習熟期間を1年から半年に短縮するなど定量的な成果を創出
株式会社エーピーコミュニケーションズ
iTOC事業部 CWE部 AI推進チーム 田邉 久明
iTOC事業部 CWE部 AI推進チーム 小林 勇介
iTOC事業部 MBS部 FIG TACチーム 川口 渓
iTOC事業部 MBS部 FIG TACチーム 髙井良 佑宇
iTOC事業部 MBS部 石本 健
AI活用を社内でリードする、専門知識をもつ全社横断チームを設立
AIOEは「100人分の仕事を10人で実現する」をテーマに、人の数に頼らない新しいデリバリーモデルをAIで作ることに挑む専門チームだ。具体的には、現場業務の課題解決相談窓口、ツール開発、社内横断的な知見の共有など幅広く取り組んでいる。
AIによって一人ひとりのエンジニアが生み出せる価値を飛躍的に高めることで生まれた時間は、単なるコスト削減にとどまらず、エンジニアがお客様の課題により深く向き合うための時間となる。お客様への提供価値もおのずと向上する。
さらにAIOEが見据えているのは、お客様が「AIを使いこなせる組織」になるための伴走者となることだ。APCのエンジニアがAI活用の実践で積み重ねた知見や開発したツールを、顧客のAI活用支援に展開する動きは、すでに始まっている。
今回はこのAIOEによる支援のもと、APC社内にて業務のAI活用を加速させた事例を紹介します。
関連記事:“100人分の仕事を10人で” を、ただのスローガンじゃなく現実に。 AIで新しい価値提供を生み出すチーム:AIOE
(1)事業部独自のAI推進チームの活動を支援

iTOC事業部CWE部は、ネットワーク運用コンサル・運用設計・運用支援を担い、主に客先に常駐して多数のプロジェクトを遂行している。AI活用の重要性は認識していたが、専門的な知見を持つメンバーが部内におらず、CWE部としてAI活用をどう進めればいいのか、AIOEの有識者に何を相談していいのかもわからない状況であった。また常駐先によって利用できるAIツールが異なるため、画一的な導入が難しいという背景もあった。
そこでCWE部のリーダー層数名がAI推進チームを立ち上げ、現場の課題の集約とAI活用可能性を検討。AIOEが今回支援したのは、この部独自のAI推進チームの活動支援だ。
AIOEは、まずは幅広く業務課題を収集する枠組みを構築。CWE内の多数のプロジェクトの窓口担当から、AIで解決すべきかどうかにかかわらず、課題を広く洗い出してもらった。
その上で、収集した課題を「優先度」「実現性(AIが適切に解けるか)」「導入効果」の3軸でスコアリングし、取り組むべきテーマを絞り込んでいった。

CWE部AI推進チームの田邉 久明は「現場から上がる数多くの課題の中で、どれをAIで解決できるのかを見極めるのは我々には難しいため、その支援は助かりました」と話す。
こうして、AIOEが最終的にAI活用シナリオとして、複数の候補から最終的に2案件を優先テーマとして設定した。
その1つの「シフト作成自動化」は、24時間365日対応プロジェクトにおいて、客先常駐するAPCスタッフの複雑なシフト調整をAIで効率化するものだ。現在はまだ構築途中だが、他プロジェクトへの横展開を見据えた汎用ツールとしての可能性に着目し、取り組みを進めている。
AI推進チームの小林 勇介は「私たちだけの取り組みでは、どうしても特定の現場に特化しがちです。AIOEに支援を依頼したことで、部署の枠を超えても使えるものを作るという広い視点を得られました」と語る。
もう1つのテーマが「大規模ルーターリプレイス業務の効率化」である。APCが支援する企業のさらにお客様となるエンドユーザー企業にて、数千台のルーターに対する大量のコンフィグ作成と申請書類の生成をAIで自動化し、作業工数半減を目指すものだ。
このテーマに取り組む背景には、限られたリソースと納期の中で従来通りの手作業だけで案件を進めることへの不安があった。AIOEは現状のヒアリングを重ね、このお客様へのAI活用の提案資料作成および実装にあたっての設計や実行手順の検討を進めてきた。
いずれのテーマも現在テスト・検証フェーズにあるが、今後の具体的なツール実装においてもAIOEが伴走支援を続ける。
「AIOEとの1年間の協働を通じて、現場リソースを必要以上にかけずにAI推進チームを組成し、AI活用を前進させることができました。CWE部として取り組むべきテーマが明確になり、来期以降の推進方針を固めることができたのは大きな成果です」と田邉は語る。
(2)問い合わせ対応を効率化しビジネスを拡大可能に

2つ目の事例がサポート業務へのAI活用だ。iTOC事業部MBS部FIG TACチームは、ファイアウォール製品の導入顧客にチケット型のテクニカルサポートを提供している。Palo Alto Networks公認サービスプロバイダーとして、製品仕様の問い合わせ回答やトラブルシューティングの一次切り分けを行ってきた。

同チームの川口 渓は「チーム内の課題として、業務対応範囲の拡充を目指していましたが、既存メンバーだけでは対応できる業務量に限界があり、取り組みの拡大が難しい状況でした。新人を採用したとしても、一人前になるまでには1年程度の習熟期間が必要でした」と課題を語る。
テクニカルサポート業務には、効率を損なう複数の課題が存在していた。まず、Palo Alto Networksの公式ドキュメントは膨大であり、仕様確認に時間がかかる。また、過去の対応履歴がExcelによる手作業管理のため、検索性が低く、蓄積された事例を効率的に活用できていなかった。
こうした課題の共有を受けたAIOEは業務フローを分析し、Geminiのカスタムプロンプト機能であるGemを用いた仕組みを提案した。メーカー公式サイトやナレッジサイトのURLをGemに指定し、問い合わせ内容に応じて必要なドキュメントを自動参照・要約する仕組みだ。
叩き台はAIOEが作成し、チームメンバーが実業務で試しながら自ら調整し、フィードバックをもとにAIOEが改修するというサイクルを繰り返して実用性を高めていった。
これによりトラブルシューティングに必要な情報の洗い出し支援、関連ドキュメントのURL付き提示、ログメッセージの意味推測、問い合わせ事象の要約・構造化といった機能を実現した。その結果、調査スピード向上による全体工数の短縮や回答品質を安定させる効果が出ている。
サポート業務にあたる髙井良 佑宇は「問い合わせに対し、AIと壁打ちのように対話を重ねることで、事象の理解が深まり、対応方針が一貫してブレなくなります。『この方向性で対応すれば問題ない』というイメージを持つことができる点が、大きなメリットです」と語る。
また、Palo Alto Networks製品未経験者が独り立ちするまでに要する期間が、通常1年から約半年に短縮された。
効率化によって余力が生まれたことで今後は、Palo Alto Networks以外の製品にもサービスを拡充するためのビジネスの要求に応えることが可能となった。
(3)採用面接の「属人化」「非効率」をAIで解消
3つ目の事例が、iTOC事業部での採用業務での活用だ。この背景として、人材採用活動は非効率な業務と属人化が課題となっていた。例えば、応募書類の一次評価は複数の担当者が行うが、求人票に指針はあるものの合否の感覚値には個人差が出やすく、標準化が難しい。また、書類確認から面接準備、面接後の情報整理まで、管理職が担う採用関連業務の負担は小さくなかった。
そこでiTOC事業部はAIOEに相談を持ちかけた。AIOEでは、まず業務フローを分析した上で、書類選考フェーズと面接フェーズのそれぞれに対応したプロンプトを設計・開発した。
「書類チェックプロンプト」は、履歴書・職務経歴書・推薦状などをアップロードするだけで、内容の要約・合否可能性の参考提示・面接時に確認すべき事項や注意点を自動で出力する。
「面接文字起こし整理プロンプト」は、応募者同意のもと録音した面接の会話を文字起こしし、評価レポートに必要な情報を整理・要約して出力する。アウトプットの設計はAIOEが主導し、現場の漠然としたニーズを具体的な仕組みに落とし込んだ。個人情報を扱うために必要な保存方法・アクセス権・社内承認フローの整備は、人事部が担った。
AI活用によって、面接後のレポート作成時間は、約30分から10〜15分程度に短縮された。また、記憶を掘り起こす必要がなくなり、精度も向上した。書類の読み込みも深くなり、概要把握の質と効率が高まっている。

iTOC事業部側のAIOEとの窓口として取り組みに参画した石本 健は「AI活用は知見が必要な領域であるため、活用初期に自己流で取り組もうとすると考慮不足が生じてしまいます。専門家の助けを借りて本当によかったと思います。また、実現したいことを汲み取って現実的な解決策に落とし込んでくれたことも助かりました」と振り返る。
(4)新入社員向けに生成AI活用研修プログラムを設計
石本がもう1つAIOEの支援を受けたのが、AI活用研修プログラムだ。APCでは社内研修制度として社内大学「APアカデミー」を運営し、AI活用も含むキャリア実現に欠かせないスキルや能力の獲得を支援している。
iTOC事業部ではそれと並行して、経験が浅いポテンシャル採用の社員を対象とした事業部独自の長期研修制度「WorkReady研修」を実施している。ネットワーク・サーバー・クラウド・セキュリティ・自動化・ビジネスと幅広い領域を合わせて1年程度かけて習得するカリキュラムだ。さらに新入社員全員が身につけておくべきAIリテラシーのカリキュラム追加を検討したが、体系立てて設計することが難しく、取り組みが前進しなかった。
そこで依頼を受けたAIOEでは、iTOC事業部メンバーと協議を重ねながら、2つの生成AI活用研修を設計した。「プロンプト研修」では、AIを適切に活用するためのプロンプトの書き方を体系的に学ぶ。特定の技術に依存せず、ビジネスパーソンとして汎用的に使えるAI活用力の習得を目的としている。
「業務自動化実践研修」では、AIを使った自動化の考え方を実践的に学ぶ内容を設計している。当初は実際の業務に紐づけた内容を想定していたが、検証環境構築が壁となり、まずは「AIを適切に活用する思考法・実践力」に焦点を絞った。この試行錯誤にもAIOEが伴走し、現場の実情に合った着地点を探った。
展開開始は2026年度の新入社員からのため、成果がでるのはまだこれからだが、オンボーディングの早期完了、業務遂行のスピードや品質向上に貢献できると石本は期待を示す。
「AIを組織に根付かせるには、最初の一歩となる研修が非常に重要です。AI活用の専門知識を持つAIOEに相談し、自分たちだけでは思いつかない提案をしてもらえたからこそ、研修が形になりました」(石本)
AIOEは、社内でのAI活用支援を通じて知見やノウハウを蓄積しています。
私たち自身も社内でAI活用を試行錯誤しながら進めているからこそ、AI導入時につまずきやすいポイントや現場ならではの課題も理解し、実践に即した支援が実現できます。
こうした取り組みによって生まれた時間や知見は、お客様への提供価値の向上にもつながっています。
今後も社内での実践を重ねながら、お客様への提供価値のさらなる向上につなげていきます。





