2026/01/26
ACS事業部リーダーインタビュー Vol.1:上林 太洋 ―取締役 兼 事業部長
エーピーコミュニケーションズ(APC)の社内新規事業部署である、ACS事業部では
プライム案件を前提とする戦略を立て、攻めのDXと言われる不確実性の高いアジャイル/DevOpsの領域において活動しています。
技術メソドロジーとしては、Azureを中心としたクラウドネイティブ/Platform Engineering/IaC/AI駆動開発/LLMなどの領域で、主にエンタープライズ企業を中心に支援を行っています。
「2027年までに、開発者体験(DevEx)向上Platform の分野でNo.1になる」
そのためにACS事業部が選んだ武器は、「Platform Engineering」と「Microsoft Azure(以下、Azure)」、そして「AI」でした。
なぜAzureなのか。なぜ今、AIエージェントが自律的に動く「Agentic DevOps」を見据えるのか。 「AIをただ導入するだけでは意味がない」。そう語る事業責任者・上林太洋が、日本企業の“内製化”を劇的に加速させるための、事業戦略と独自のポジションについて語ります。
上林 太洋(かみばやし たかひろ)
取締役 兼 ACS事業部長
電気通信大学を中退したのち2002年にエーピーコミュニケーションズへ入社し、エンジニアからキャリアを開始。エンジニア部隊の事業責任者、新規SI事業責任者、教育、採用、広報、請負開発PMOなどを経験。2018年に戦略企画としてアジャイル中期経営計画を立案し、中期経営計画の立案責任者として2019年に取締役へ。取締役としてエンジニアリング事業を指揮しながら、技術/顧客両面でポートフォリオをシフト、自社内DXプロダクトの推進。2020年からはACS事業部長として顧客のクラウドネイティブ技術内製化を推進する新規事業を立ち上げる。自らも一部案件に参画しコンサルとして、DX推進プロジェクトを指揮している。
日本企業の”内製化”は進化する。
Platform Engineering × AIで加速させる「Agentic DevOps」への転換
事業戦略:「DevEx(開発者体験)向上Platform No.1」
――事業部のミッションと、具体的な戦略について教えてください。
上林: 私たちのミッションは、「DevEx(開発者体験)向上Platform No.1戦略」です。 2027年までに、Platform EngineeringとAIを活用したDevEx向上の分野でNo.1企業になることを目指しています。
その中核となるのが、内製化を加速させる「Platform Engineering」と、開発プロセスそのものを変革する「AI」の融合です。 現在、システムは複雑化し、エンジニアの認知負荷は限界に達しています。開発者が本来の価値創造に集中できるよう、私たちはAzureや「Backstage」といった技術を用いて、AIが組み込まれた開発者ポータルやセルフサービス化の仕組みを構築しています。
▼ACS事業部が展開する自社サービス
・開発者ポータル PlaTTシリーズ
・クラウドネイティブ内製化支援サービス for Microsoft Azure
――AIやプラットフォーム技術を推進する上で、なぜ「Microsoft Azure」に注力しているのでしょうか?
上林: これには明確な3つの戦略的理由があります。
1つ目は、エンタープライズ企業の「攻めのDX」における親和性の高さです。 多くの企業ですでにMicrosoft 365やEntra ID(旧Azure AD)が導入されており、既存の資産やセキュリティ基盤と連携しながらDXを進める上で、Azureは非常に強力な選択肢となります。加えて、OpenAIとの提携により、AI分野でも他社と大きく差別化されています。
2つ目は、Microsoft社のクラウドネイティブ・AI技術に対する「本気度」です。 マイクロソフトはGitHubの買収や、OpenAIへの大規模な出資、Kubernetes周辺のOSS(Open Source Software)への投資などを積極的に行っています。クラウドネイティブやPlatform Engineeringの推進に不可欠な技術に、会社として注力している姿勢が明確です。
そして3つ目は、パートナーとしての「希少性」です。 マイクロソフトのエコシステムにおいて、OSSやクラウドネイティブ領域に強いパートナーはまだ多くありません。その中で私たちは、国内で唯一、以下の2つの領域でマイクロソフトの最上位認定である「Specialization」を取得しています。
・Kubernetes on Microsoft Azure Specialization
・Accelerate Developer Productivity with Microsoft Azure Specialization)
また、マイクロソフトのPlatform EngineeringにおけるSIと内製化支援の両方を手掛けており、相互補完的なポジションを確立しています。
――そうした独自のポジションを確立した上で、AI技術についてはどのような未来を描いていますか?
上林: 私たちの強みである「Platform Engineering」が、これからのAI時代に不可欠な「Agentic DevOps」の土台になると考えています。
AIエージェントの登場により、私たちは今、「AI Support DevOps」から「Agentic DevOps」への転換点にいると考えています。 これまでは人が主体でAIがサポートしていましたが、これからはAIエージェントが自律的にコーディング、テスト、デプロイ、運用を行い、連携し合う時代が来ます。
しかし、AIエージェントをただ導入すればいいわけではありません。AIが勝手なことをしないようガバナンスを効かせたり、正しく連携させたりするための「整えられたプラットフォーム」がなければ、AIは実力を発揮できないからです。

――なるほど。「AIを活用するための土台」を作れることが、APCの強みなんですね。
上林: その通りです。AgenticDevOpsの世界は既存のDevOpsをしっかりと実現したうえに成り立つ世界でもあります。また、私たちはAzureのKubernetes基盤、プロ開発のAIエージェント基盤であるMicrosoft Foundry、そしてGitHub Copilotも含めたGitHub製品群の技術を深く理解し、Platform Engineeringの実践知を持っています。だからこそ、単に「AIを使おう」と言うだけでなく、「AIが安全かつ自律的に動ける環境(AI Readyな開発基盤)」をお客様に提供できるのです。
この環境があれば、開発手法そのものが変わります。 自然言語で開発する「VibeCoding」や、人間が仕様を定義すればAIが実装する「仕様駆動開発(Spec-Driven Development:SDD)」が当たり前になり、開発者は詳細なコーディングよりも、設計、判断、ガバナンスといった上流工程に集中するようになります。
――その変化は、SIビジネスにどのような影響を与えるのでしょうか?
上林: 「内製化」が加速すると予測しています。 これまでは専門性の高い人材を確保するために外注(アウトソーシング)が必要でしたが、AIエージェントがその役割を担うようになれば、AIを使いこなす少数の社内メンバーで開発が完結するようになるからです。一方で少数のメンバーは、AIの作る膨大なコードのレビューに翻弄されることにもなります。認知負荷の増大です。
だからこそ、私たちは「Agentic DevOps」時代を見据え、AI時代のスピードに追従するため各技術の専門性をとがらせるとともに、AIが活躍するための品質基準やガバナンス(AI Ready)を整備し、お客様が認知負荷を減らした状況で内製しAIを使いこなせる組織へと変革する支援を行っているのです。
組織哲学:「Engineer Driven」――技術の海を探索し、ビジネスに変える面白さ
――エンジニア組織として、どのようなポリシーを掲げているのでしょうか?
上林: 私たちのポリシーは、「Engineer Driven(エンジニア主導)」です。 よくエンジニアのキャリア論として「SIerか、自社サービス(Web系)か?」という議論がありますが、私は「SIだからこそ実現できる、エンジニアにとっての面白さ」があると考えています 。
それは、技術という「深く広い海」を探索し、自分たちで技術を探し出し、選び、研ぎ澄ませてビジネスにしていく――その過程をチームで実現していく「エキサイトメント」です 。 私たちがクラウドネイティブやPlatform Engineering、AIといった領域を選んでいるのも、戦略的な理由以前に、その技術の可能性を広げる探索そのものが「楽しいから」という想いが根底にあります 。ただし、楽しさを忘れないためにも、技術を顧客価値・そして我々のビジネスに転換する必要があります。
――「技術探求の楽しさ」をビジネスにする。理想的ですが、従来のSIビジネスの構造では難しさもありませんか?
上林: おっしゃる通りです。一般的なSIは「人月ビジネス」であり、個々人が自力で学習した知識を、納品のために「消費」していくモデルになりがちです 。それでは新しい技術への挑戦も、学習時間の確保も難しくなってしまいます 。
その状況を打破し、本当にEngineer Drivenを実現するために、私たちは「業務時間の20〜30%をインプットやアウトプットの時間に充てる」という指針を掲げています 。 お客様と共に学び、学び直し、チームとしてアウトプットしていく。この活動を業務時間内に明示的に組み込むことで、組織全体が学習し続ける「プラットフォーム」になることを目指しています 。
カルチャーとマネジメント:自律したプロフェッショナルが集う場所へ
――メンバーのマネジメントについては、どのような方針をとっていますか?
上林: 「Management 3.0」の考え方をベースに、マイクロマネジメントを行わず、性善説に基づいた運営を行っています。 私たちが大切にしている価値観に「1. どんなときも自ら楽しみを見つけに行く」「2. Agilityを大切に」「3. ユーザー/顧客が喜びを得られることを軸に考える」といったものがあります。
会社組織とは、従業員を管理する場所ではなく、社員が自己実現のために利用できる「プラットフォーム」であるべきです。だからこそ、細かいルールで縛るのではなく、こうした共通の価値観を行動指針として共有し、あとはメンバーが自律して活動できる環境を作ることに注力しています。
――リモートワークが中心だと聞いていますが、コミュニケーションはどのように取っているのでしょうか?
上林: ACS事業部は原則フルリモートでの運営で、メンバーの約半数は大阪や福岡など地方に在住しています。住む場所によるハンデはなく、成果に応じて正当に評価されます。
フルリモートだからこそ、コミュニケーション設計には細心の注意を払っています。 SlackやGitHubでの「非同期コミュニケーション」を基本としつつ、Google MeetやSlackのハドルを活用した「同期コミュニケーション」も活発です。朝会・夕会に加え、全社員向けの配信イベントや「Win Session」など、孤独にならないための参加型イベントも用意しています。また、リモートワーク担当をアサインし、いかにエンジニアのパフォーマンスを上げるための環境を構築できるか試行錯誤しています。
――新しく入るメンバーへのサポートや、成長支援の仕組みはありますか?
上林: 新メンバーがストレスなく業務に入り、最先端技術にキャッチアップできるよう、オンボーディング施策を充実させています。 「組織の価値観」や「戦略」の理解はもちろん、Azureの基礎スキル(AZ-104レベル相当)やKubernetesなどのクラウドネイティブ技術を学ぶ研修を用意しています。また、メンバーとの相互理解を深めるため、「パーソナルマップ」を使った歓迎会も実施しています。
さらに、Engineer Drivenの一環として技術ブログの執筆やイベントへの登壇を業務時間内で行うことを推奨しており、海外カンファレンスのリアルタイムレポート作成などもチームでサポートしています。 インプットだけでなく、アウトプットを通じて市場価値を高めていける環境です。
▼参考記事
今後の挑戦:「クラウドネイティブ」を体現する組織へ
――これからチームとして、どのような組織を目指していくのでしょうか?
上林: 今、日本中でAIシフトが進み始めていますが、多くの企業がその実現に苦戦しています。 私たちは幸運にも、シリコンバレーのMirantis社との出会いなどを通じて、OpenStackやクラウドネイティブ技術、そしてPlatform Engineeringや対話型AIといった最先端技術にいち早く触れ、組織の中で文化と技術を育んできました。
私たちが目指しているのは、単に新しい技術を使う集団ではありません。 Platform EngineeringやKubernetes、Azure、そしてOpenAIなどの技術を一人ひとりが常に学び続け、心理的な安全性の中で議論し、行動し、それぞれが事業に貢献する。そんな「クラウドネイティブ(なあり方)」そのものを体現できる組織を、皆さんと一緒に育んでいきたいと考えています。
――具体的に、今後どのような技術的な挑戦が待っているのでしょうか?
上林: 私たちの事業には、エンジニアとして挑戦しがいのある「次のステップ」が無数にあります。 例えば、Platform Engineeringの中核となる「開発者ポータルのマネージドサービス化」や、IaC(Infrastructure as Code)データを活用した「インフラプロビジョニングの完全セルフサービス化」。 さらには、「対話型AIとMCPサーバの開発者ポータルへの組み込み」や、連携する「Kubernetesコントローラーの独自機能開発」、「IaCのSDD化」など、アイデアは尽きません。
これらは絵空事ではなく、実現のために積極的な投資を行っている現在進行形のプロジェクトです。エンジニアとして、こうした未踏の領域に「自らの手で」道を作っていく面白さが、ACS事業部にはあります。

メッセージ:正解のない「荒野」を、共に進もう
――最後に、応募を検討されている方へメッセージをお願いします。
上林: 正直に申し上げますが、私たちは理想を持っていますが、まだ理想郷にはいません。 日々、理想と現実のギャップに格闘している毎日です。
でも、同じ志を持つ仲間と一緒に「ああでもない、こうでもない」と議論し、理想に向かって泥臭く努力する毎日こそが、実は一番楽しく、エキサイティングだと私は思っています。 「ここに加わって高いレベルで切磋琢磨したい」「一緒に理想を実現したい」。そんな熱い想いを持った方と、ぜひ一度お話しできれば嬉しいです。
* * * *
ACS事業部では、エンジニアを積極採用中です。
カジュアル面談も行っていますので、お気軽にお申し込みください!
■ ACS事業部に興味が湧いたら:ACS事業部 Culture Deck
■ 話を聞いてみたいと思ったら:カジュアル面談申込
■ 募集中の職種を見たいと思ったら:求人一覧(【ACSD】が付いている求人票をご覧ください)
▼エンジニアによる技術情報発信
tech blog APC
Qiita









