SERVICESOLIZE株式会社 様

リアーキテクトやリファクタリングといった
「提案型支援」によって プロダクト価値の最大化に貢献 SOLIZE株式会社 様

今回は、SOLIZE株式会社のSOLIZE Innovations事業部 事業企画開発部 井戸様、矢野様から『共創型アジャイルSIサービス for Microsoft Azure』をご活用いただいた背景や感想などをお伺いしました。

SOLIZE株式会社

SOLIZE Innovations事業部 事業企画開発部
シニアコンサルタント 井戸 伸彰 様
Senior Manager 矢野 渉 様

― SOLIZE株式会社様と、SOLIZE Innovations事業部 事業企画開発部の業務概要をお聞かせください。

井戸:当社は、製品開発支援、3D プリンティング、業務変革の 3 つの領域で製造業を対象にものづくりへのデジタル活用を促進するサービスを提供しています。その成果の実証として、かつては携帯電話など樹脂製品の金型を作る自社工場を持っており、金型設計製造にかかるリードタイムを45日から45時間へと劇的な短縮に成功しました。そこで培われた「ものづくり技術」「3D・デジタル化技術」「熟練暗黙知を紐解く技術」が当社の強みになっています。

製造業の設計工程は、熟練エンジニアが持つ経験やノウハウといった「暗黙知」に支えられています。それらを紐解き、作業の自動化や業務プロセスの標準化を進めても、やはり「人による判断」という部分は暗黙知として残ってしまいます。その部分を「自然言語処理 AI 技術」を用いることで形式知に変えて、業務変革を支援するツールを開発するというのがSOLIZE Innovations事業部 事業企画開発部のミッションであり、その製品・サービスの総称が「SpectA(スぺクタ)」です。

矢野:SpectAには現在3つのソリューションがあります。 熟練者に依存した要求文書読解をAIがサポートする「SpectA RFQ Guide View」、エンジニアの創造力を開放する次世代ナレッジマネジメント「SpectA DKM」そして安全管理業務における危険予知の高度化・現場改善をAIがサポートする「SpectA KY-Tool」です。 今回エーピーコミュニケーションズ(以下、APC)さんに参画いただいたのは、「SpectA KY-Tool」の開発チームになります。

― SpectA KY-Toolについて概要をお聞かせいただけますか?

井戸:SOLIZE独自の自然言語処理AIを搭載した危険予知支援ツールで、建設や工場などで実施予定の作業に対して、蓄積された過去の災害事例から関連したリスクを抽出します。

施工現場における安全管理業務では、計画段階で施工工程ごとのリスクの洗い出しやリスク評価を行いますが、担当者の経験や知識によるバラツキがでてしまうことがあります。リスクを漏れなく認識し正しく評価できなければ、適切なリスク低減措置をとることができません。
施工段階でも作業開始前の朝礼時に職長が当日の作業に関する安全指示を出しますが、これにもバラつきが出てしまいます。また、指示を受ける作業員も自分ごと化出来ずに、形骸化してしまうということが少なくありません。
これは、事故の未然防止に大きく寄与するはずの熟練者がもつ暗黙知や過去の労働災害事例が、組織の中で活かしきれていないということです。

SpectA KY-Toolは、これを形式知に変えて効率的に共有できるようにします。膨大なデータから作業に関連する事例を検索することができるため、リスクの洗い出しが容易になりリスク評価のバラつきも抑えることができます。日々の安全指示も当日の作業情報を入力すると、関連性の高い具体的な事例を図や動画と合せて提示するので、指示を受ける作業員も危険を想像しやすく危機管理を「自分事化」できます。

― SpectA KY-Toolはどのような体制で開発されているのでしょうか?

井戸:自然言語処理AIによるコアモジュールは当社のエンジニアが開発を担当しており、それ以外のインフラ設計構築、フロントエンドやバックエンドのアプリケーション構築はパートナー企業様に担っていただいていて、現在はここをAPCさんにお任せしています。

― 当社にお声がけいただく前に、御社で抱えておられた課題についてお聞かせいただけますか?

矢野:お客さまからの引き合いが順調に増加しており、サービスを拡大していく上で一番の課題は、セキュリティを含めたクラウドベースでの開発力の更なる強化でした。Azureでの開発に精通したパートナー探しが急務である中、信頼に足る高度な技術力と提案力をもったパートナー企業を見つけるのに苦戦していました。そこでマイクロソフトさんに相談をしたところ「ぴったりの開発パートナーがいますよ」とご紹介いただいたのがAPCさんでした。

― SpectA KY-Toolの開発には2022年11月から携わらせていただいておりますが、当社のサービスに対する率直なご感想をお聞かせください。

矢野:最初に携わっていただいたのはインフラのシステム構成変更でした。当初は、お客さまごとにサブスクリプションを構成して専用システムを構築していましたが、環境構築のリードタイムが長く、リソース効率も悪い点が課題でした。この課題を解決するため、インフラをひとまとめにして、それに合わせてDBなどのアプリも1環境で複数のお客さまに提供できるようにリアーキテクト(※)をしていただきました。このとき、当社がお伝えした「やりたいこと」に対して、高度な技術的視点に裏付けされた懸念点も含めて先々を見据えた提案をしていただいて、頼りがいを感じました。このリアーキテクトの結果、年間で約200万円のコスト削減ができました。

※:システムの基本的な構造変更

そのあと、ご提案いただいたのは既存コードのリファクタリング(※)でした。結構前から続いていたソースコードで、不具合も頻繁に起こっていたので、タイムリーな提案だったと思います。自分たちが関わっていないコードのリファクタリングというのは、なかなか提案しにくいことだと思うのですが、必要なことを忖度せずに提案してくれる姿勢に真摯さを感じました。しかも、やみくもに修正するのではなく、新規機能開発と並行して進めるために的を絞って進めていただいたので、当社のビジネスプランをしっかり意識されていることを感じました。このリファクタリングによってバグの件数がかなり減り、バグ修正にかける工数が半分になるという効果も出ています。
他に、GitHub Copilotをはじめとする開発の効率化を図る先進的なツールの導入などもご提案いただきましたね。

※:プログラムの機能を変えず、内部コードの保守性を向上させるためにコードを整理・改善する作業

井戸:このように、こちらの意図などを汲み取って提案型でどんどん開発を進めてくださるので、開発スピードと効率は格段にあがっており、業務を委託する時に必要となるマネジメントコストやコミュニケーションコストは大幅に下がっています。「共創型」と銘打っているだけあって、同じ目線を持った本当の意味でのパートナーとして一緒に開発をしていると感じます。APCさんからの色々な提案やアドバイスは他のSpectAシリーズでも取り入れており、本当に感謝しています。

― 今後の展望についてお聞かせください

井戸:労働災害というのは、日本の建築業に限らず、プラントや製造業の工場も含めて、軽微な事故から重篤な事故まで、今この瞬間もたくさん起こっています。こういった悲しい事故をなくすには、個社ごとの対策だけではなく共通基盤としてのプラットフォームが必要であり、SpectA KY-Toolをそのプラットフォームにしていきたいという思いがあります。この構想は日本だけに留まらず、グローバルも視野に入れています。実際に外国人労働者の方も増えてきている現場でSpectA KY-Toolを導入いただいたところ、日本語がわからない方にもイメージで伝えることができて安全意識が高まったというフィードバックをいただいています。
この構想の実現を見据えながら、次のフェーズでは蓄積したデータの利活用や、生成AIを使った画像生成機能の組み込みなどをやっていきたいので、今後もAPCさんがお持ちの知見をお借りできればと思っています。

矢野:SpectAは3つのシリーズがありますが、今はそれぞれが独立しています。今後はそれぞれの強みを増しながら相互にシナジーを発揮していきたいと思っています。それを実現するにはシステム構成の大幅な変更が必要になります。そういったところもAPCさんと一緒にやっていきたいと思っていますので、今後もよろしくお願いします。

― 貴重なお話をありがとうございました。

SOLIZE株式会社

SOLIZE株式会社

3D CADをはじめとするさまざまなデジタルツールを駆使した設計開発支援 、3Dプリンターによる試作品製作・最終製品製作、3Dプリンター導入支援、暗黙知を形式知化して開発を効率化するコンサルティングなど、製品開発における幅広い技術とサービスを提供しています。
https://www.solize.com/

インタビュー実施日:2023年11月17日