CASEイオンスマートテクノロジー株式会社 様

クラウドネイティブ内製化と
プラットフォームエンジニアリング推進の支援で
SRE/Platformチームの強化と開発速度の向上に寄与 イオンスマートテクノロジー株式会社 様

イオングループの機能会社として、スーパーマーケットからクレジットまで、200社以上に及ぶ同グループの事業の成長を、テクノロジーで加速させることをミッションとするイオンスマートテクノロジー株式会社(以下、AST)。ASTは、エンジニアリングにおける特定の知見やリソースの不足といった課題を解決するため、エーピーコミュニケーションズ(以下、APC)を新たな支援パートナーに選定した。これにより、両社のエンジニアによるパートナーシップのもと、クラウドネイティブ開発やプラットフォームエンジニアリングを推進する体制構築が実現した。今回は、DevSecOps Div ディレクターの齋藤光氏に、その経緯についてお話を伺いました。

Point

  • APCのエンジニアによるAKSやプラットフォームエンジニアリングに関する高い専門性が、パートナー選定の決め手に
  • 両社のエンジニア間での率直かつ建設的な意見交換により、意思疎通ができる雰囲気が醸成され、理想的なパートナーシップが実現
  • プラットフォームエンジニアリングを推進する土壌づくりが進むとともに、プロダクト開発の加速や品質向上に寄与

イオンスマートテクノロジー株式会社

DevSecOps Div ディレクター
齋藤 光 氏

グループ横断のテクノロジー変革を担うAST
クラウドネイティブ化に立ちはだかる課題

「イオン」「ダイエー」「ミニストップ」などの店舗ブランドを擁し、さまざまな流通事業を展開しているイオングループに属するAST。同社は、「グループの全てのビジネスをテクノロジーで進化させる」というミッションを掲げ、顧客のショッピング体験の向上と店舗DXの推進に注力している。具体的には、顧客とグループ各店舗を直接つなぐ統合アプリ「iAEON」の開発や、グループ各社が提供する各種サービスのID統合、従業員の働き方を変える仕組みづくりなどに取り組んでいる。

「私は2022年5月、SREエンジニアとしてASTに入社したのですが、当時のASTには、初期開発の技術負債や内製開発に至れずに残るベンダー依存など、さまざまな課題が残っていました。それらを一つ一つ解決していくため、組織や体制の見直しを進めてエンジニアの意識改革を図るとともに、「HashiCorp Terraform」や「New Relic」、「PagerDuty」など、SRE関連ツールを積極的に活用し、運用の自動化・可視化を進めていったのですが、Microsoft Azureに知見を持つエンジニアの採用が難しいことが最大の課題でした」(齋藤氏)

当時のASTでは、こうした課題解決のために『クラウドの活用』『開発の内製化』という基本方針が全社的に推進された。その一環として『Azure Kubernetes Service(AKS)』を導入し、クラウドネイティブな開発に着手したものの、Azureの専門知識を持つエンジニアが不足。結果として、技術的な正解も見えにくいという課題に直面していた。

プラットフォームエンジニアリング推進へ
Azure領域の信頼できるパートナーとしてAPCを選定

この状況を改善するため、ASTはパートナーの見直しを検討。開発チームの増加やツールの多様化に伴うエンジニアの認知負荷の高まりを受け、プラットフォームエンジニアリングによるセルフサービス化が必要と考えていたことから、齋藤氏は、Azureやプラットフォームエンジニアリングに強みを持つパートナーを求めていた。

パートナーに求める要件は下記の2点とした。

・インフラ環境の構築や、プラットフォームエンジニアリングと、Azureについての深い知見および技術力があること
・ブログやイベントなどの情報発信から伝わるエンジニアの熱量や勉強意欲など、社外へも影響を与えるカルチャーを持つこと

これを満たすパートナーとしての有力候補がAPCだった。

「私たちはAzureをインフラ基盤として活用し、その利用を最適化することを前提に、Azureやプラットフォームエンジニアリングに強みを持つ会社との協業を希望していました。APCはMCP(Microsoft Certified Professional)の取得者などが活躍していますし、Azureやプラットフォームエンジニアリングのコミュニティ活動でも顕著な存在でした。また、情報発信力も高く、Azureへの"愛"さえ感じられるほどでしたので、一緒に仕事ができれば楽しいだろうなと考えていました。これは後から聞いた話ですが、APCのエンジニアも同じ思いだったそうです」(齋藤氏)

コミュニケーション強化やナレッジ共有による
パートナーシップを構築

コミュニティで両社のエンジニアが出会ったことがきっかけとなって商談が進み、会社同士の正式な引き合いへと発展。2024年1月にはパートナー契約を交わすことが決まった。

当初、APCに対して「真面目に丁寧な対応をしてくれている反面、堅苦しい印象もあった」と話す齋藤氏。発注元と発注先という関係にとらわれず、技術面では遠慮なく意見を交わせる関係を築きたいと考え、まずコミュニケーションの強化を行った。

「朝会などのミーティングの時間で雑談の時間をとったりして、コミュニケーションの時間を意識的に増やしました。また、ペアプログラミングやモブプログラミングなどチームが協調できる手法を取り入れ、ナレッジの同期を図りました」(齋藤氏)

齋藤氏の考え方は、APCにとっても理想的なパートナーとの関係性そのものであった。
こうした取り組みにより、両社のエンジニアが率直かつ建設的に意見を交換しながら、意思の疎通ができる雰囲気が醸成されていった。発注元と発注先というお互いの関係を超え、真の意味でのパートナーシップを構築することができた。

クラウドネイティブ内製化支援と
プラットフォームエンジニアリングの推進

まず行ったのは、クラウドネイティブ内製化の支援。
もともと社内にもAzureの知識を持つ社員はいたが、最新情報のキャッチアップに課題があった。そこで、APCのエンジニアがSREチームに参画。
また、社内向けにAzure Networkやコンテナ技術、コスト最適化などをテーマにAzureの勉強会を数回実施し、社内の知識・スキル向上にも貢献した。

もう一つメインで取り組んだのが、プラットフォームエンジニアリングの推進。
APCのエンジニアがPlatformチームの組成や運営に参加し、Terraformコードのリファクタリングやモジュール整備、セルフサービス化など、プラットフォームエンジニアリングを推進することで、認知負荷の軽減を図った。
さらに、「HashiCorp Vault」の導入などに取り組んだことで、シークレット管理のセルフサービス化も実現、組織的にプラットフォームエンジニアリングを推進していく基盤が整備された。

「APCのエンジニアには、HashiCorp Vaultの運用をより効率的にすべく、シークレット管理のセルフサービス化に協力いただきました。APCにはMicrosoft MVPやHashiCorp Ambassadors等の認定を受けたエンジニアも在籍しており、そうした優秀な人材をアサインしていただいたことに加え、チームとしての一体感を醸成できたことも、非常に大きかったと思っています」(齋藤氏)

組織の質向上とスケールアップを目指し、APCのさらなる支援を期待

今後についてASTでは、APCとの連携を強化しつつ、クラウドネイティブ開発とプラットフォームエンジニアリングの推進と内製化をさらに進めていくという。プラットフォームそのものをプロダクトとして捉え、開発者を顧客とみなして改善し、自動化や効率化を追求していくという方針だ。「そうした意味でも、組織の質を高めつつスケールアップさせていく必要があります。APCはAzureやHashiCorpのみならず、AIやMCP(Model Context Protocol)サーバーなど最新テクノロジーについてもキャッチアップが速いので、今後とも一緒に議論しながら取り組んでいきたいと期待しています」(齋藤氏)

プラットフォームエンジニアリングの推進に関しては、将来的に開発者がHCL(Terraformのコーディング言語)に習熟していなくても開発環境のプロビジョニングを高速に行えるポータルを使ったフロー化を目指している。

イオンスマートテクノロジーはDevSecOps Div.を中心としたサイトリライアビリティエンジニアリングとプラットフォームエンジニアリングの推進によって、デジタルシフトを加速させ、顧客体験の向上と開発者負担の軽減の両立を図っていく。

イオンスマートテクノロジー株式会社

イオンスマートテクノロジー株式会社
所在地:千葉県千葉市美浜区中瀬1-5-1
2020年10月に設立。イオングループのデジタル部門を担う企業として、店舗と顧客をつなぐプラットフォーム「iAEON」の開発や、グループ全体のDX推進などに取り組む。スーパーマーケットからクレジットまで、国内外に展開する300社以上のイオングループすべての事業の成長を、テクノロジーにより加速させている。
https://www.aeon-st.co.jp

インタビュー実施日:2025年6月11日